傾聴トレーニングに取り組んでいるけれども、思ったようにステップアップ出来ている感じがせず、悔しい思いをするときもあると思います。
漫然と傾聴のロールプレイ(話し手と聴き手に分かれ、本当に相談事を受けているときのように傾聴技法を意識して使いながら聴くこと)をしているだけでは、スキルアップにつながらないこともあります。
この記事では、効率的にスキルアップできる傾聴ロールプレイのポイント(やり方)を5つ紹介します。
動画で知りたい方はこちら
実際の傾聴の様子
↓は、私が実際に傾聴している様子です。参考までにどうぞ。※YouTube側の字幕をオンにすると、字幕が表示されます。
1 傾聴者(カウンセラー)としての立場を取り切ること
ロールプレイで、どう質問していいかわからない、どんな気持ちを汲む言葉を伝えていいかわからないとき等に
「あっ、ちょっとスミマセン。。。」
という感じで会話を中断したい時もあると思います。
しかしこれをやっていると、必然的にトレーニングへの集中度も弱まって、結果としてスキルが身に付きにくいです。
何より実際に相談事を受けたり、悩みを聴いているときに傾聴している人が、「あっちょっとスミマセン。。。」という感じで立場を下りると、信頼関係も何もなくなってクライアントがそれ以上話せなくなります。
トレーニングとはいえ立場を途中で下りるのは、医者であればオペの途中で辞めるのと同意です。
傾聴者、カウンセラーとしての立場をしっかりとロールプレイの最後まで取り切ることで、トレーニングの集中度が高まり、結果として自信につながります。
2 時間を決めて行うこと
傾聴は集中して聴きますので、始めのうちは話しを聴くだけで汗をかく方もいらっしゃるくらい、とても疲れます。
傾聴ロールプレイの際は、初めは5分くらい、慣れてきたら10分程度に時間を決めてやると、どこが出来ていてどこを磨けばよいのかのポイントが明確になりやすいです。
時間の管理は指導者がいる場合は指導者に任せられますが、そうでない場合はクライアント役がすべきです。スキルが上がってきて要約まで出来ればカウンセラー役がするのが良いですが、始めは聴くのに必死で時間管理まで意識を配れないためです。
3 目標を決めて行うこと
これは例えば、「あいづちのときの声を大きめにする」、「的確なオウム返しを行う」など、今の自分が少し頑張ったらクリアできそうな目標がよいです。
目標の立て方ですが、その目標を立てて傾聴ロールプレイで実際にどう行動するかを明確にしておくと効果的です。
例えば、共感の言葉(感情の反映)を入れるようにするだと少し漠然としています。共感の言葉を入れるために、
- 相手の表情や声のトーンから気持ちを察していく
- オウム返しを的確にして気持ちを察していく
等、具体的な目標だと傾聴ロールプレイ内で実際に行うことが明確ですので、その目標をクリアしやすくなります。
ロールプレイが終わった後は、その目標に対してやってみてどうだったのか、相手の人にはどう感じられたのかをしっかりと振り返るとその目標クリアが早いです。
目標が変わっていくごとにスキルアップしている自分自身を感じられるはずです。
4 全力でやること
傾聴トレーニング、ロールプレイはとても疲れますし、練習でもありますので手を抜きたい気持ちの時もあると思います。
効率的にスキルアップするのであれば、その時の自分自身の全力で取り組むことで、出来ないことが少しづつ出来るようになっていきます。
全力でやると、うまくやれない自分がどうしても出てきます。
うまくやれない・出来ない自分を見るのは嫌なものですが、相談者も同様に何か上手くいかない気持ちを抱えておられ、それを何とかしたい気持ちで来られます。うまくやれない自分に向き合うことは、そんな相談者に向き合うことにも繋がります。
出来ていないポイントばかり意識するとモチベーションも下がりますので、以前の自分よりも出来るようになった点、スキルアップした点も意識しながら取り組むと継続しやすいです。
5 可能であれば、傾聴の上手な人とやること
これは傾聴やカウンセリングのスキルが高い人ほど、具体的にどこをどうすればより上達するのかのフィードバック(アドバイス)が的確だからです。
傾聴の様子を指導者がずっと見てくれているのであれば良いのですが、大人数になるとそれも難しいです。ロールプレイ終了後に相談者役からフィードバックを受けると思いますが、あいまいなフィードバックだとスキルアップに繋がりにくいです。
特にカウンセリングは、何かを与えられるものではなく自分で掴み取る一面が強いです。
傾聴トレーニングでペアを決める時も、傾聴が上手な人とペアを組む(自分から掴みにいく)姿勢が強いと上達が早いです。
傾聴ロールプレイの事例について
相談者役の実体験がお勧め
クライアント役が話す事例は基本的にどんな会話でもOKですが、マイナスの感情が話せる内容が良いです。
お勧めは自分自身が過去体験した何らかの嫌なことです。特にカウンセリングで話すような事例に限らず、グチ、腹が立ったこと、人間関係で嫌だった事、悲しかった事、寂しかった事など何でもOKです。
というのも、自分が体験した事例であればリアリティを持って語れますし、相手の関わり方によってどこまで話すかもコントロールしやすいです。
実体験を話す場合、当然ですが話しにくいことは無理に話す必要はなく、話せる範囲でOKです。
体験したことが無い事例で話す場合
クライアント役が体験したことが無い事を話す場合、感情的な部分を演じるにはある程度の共感力が求められます。
演じ切ることでクライアント役も共感力が上がるメリットはありますが、慣れていないとどうしても感情的な部分が話しにくいため、あまりお勧めはしません。
特定のテーマを決める場合
私自身トレーニング生のスキルチェックを行うときは、仕事を探しているけれどもうまくいかないというテーマに決めています。
理由はこの話題だと様々なバリエーションを持たせられ、オープンクエスチョンの力が試されるためです。(どんな仕事をどのくらい探しているか、その仕事を探そうと思ったきっかけは何か、以前はどのような仕事をしていたか等)
この話題だと、比較的軽めのマイナスの感情は出やすいですが、トラウマ級のマイナスの感情は出ないため、トレーニングする側にとっても登竜門のテーマとして適切だと感じています。
まとめ
傾聴ロールプレイのポイントとして
- 立場を取り切ること
- 時間を決めて行うこと
- 目標を決めて行うこと
- 全力でやること
- 可能であれば傾聴の上手な人とやること
を紹介しました。
傾聴トレーニングは、新しいコミュニケーションスキルを身に付けることでもあります。コミュニケーションはそれまで何十年とずっと続けてきたことなので、なかなか変えられない、上達が見えないときもあるかもしれません。
そんなときは、傾聴で相手の方の話を受け止めながら聴くように、上手くやれない自分自身も受け止めながらトレーニングに取り組んでみて下さい。
出来ない悔しさや、落ち込む自分自身の気持ちを感じながら取り組むことが、相談に来られた方の気持ちをより繊細にキャッチ出来ることにもつながっていきます。
関連:傾聴トレーニングのコツ