要約のやり方と2つの効果

傾聴における要約とは、会話全体の要約です。

長時間話を聴いていると、「ちょっとごちゃっとしてきたな」と感じられる時があります。そんな時に「今までの会話をまとめますと…」という感じでそれまでの会話全体の大切な部分をまとめて話し手に伝えます。

要約を入れることで状況を客観的に整理できたり、お互いのすれ違いを無くせるメリットがあります。

この記事では要約の方法と効果を解説します。

要約のやり方

前提として、要約は必要なときのみ使います。傾聴してごちゃごちゃしている感覚が無ければ入れる必要はありませんが、60分程度のカウンセリング・傾聴であれば、会話の最後で要約を入れると「ちゃんとわかってくれているんだな」と感じてもらいやすいです。

やり方としては、例えばある程度話を聴いた後、次のように要約して返します。

ここまでの話をまとめると、会社では上司のAさんからどう思われるかが強く気になり、仕事が手につかず、緊張感が常に強い状態ですよね。

ご家庭では奥様にそれを話してもなかなかわかってもらえず、3ヶ月くらい前から睡眠も浅くなっておられる。

そして次男さんが高校受験に差し掛かっているけれども、反抗期で会話が成り立たないということについても困っておられるんですよね。

要約後は相手の反応を必ず確認します。すれ違いがないか確認した後、「特にどれが一番気にかかっておられますか?」とお伺いすることもあります。

実際にやってみるとわかりますが、要約はかなり難易度が高いスキルです。というのも要約はその場その場で返すしかなく、他の傾聴技法のように事前に準備しておくことが出来ません。※共感や質問は事前にある程度準備できます。

要約のポイント

やり方は、大事なポイントを返すという点に尽きます。

取り組み始めは、「どこが大事なポイントか掴みにくい」と感じられる方がほとんどです。具体的には特に次のポイントに注意を払って傾聴するとよいです。

  • 特につらいと感じられている部分
  • 相手が頑張った事
  • 相手が大切にしていると感じられる点

始めに紹介した例で言うと、要約の大部分が話し手が苦しんでいるポイントです。

また、人は自分自身が頑張っている事をちゃんとわかってもらえるだけで嬉しいものです。

例えば家事育児の大変さを旦那さんに話して、それを「大変だよね。何か僕に出来ることはある?」と受け止めてもらえるか、目も合わせずに聞き流される・やって当然という態度で接されるかでは大違いだと思います。

要約のトレーニング方法については、オウム返しを10言われたら10そのまま返す勢いでやると私の場合はいつの間にか出来るようになっていました。

きっちりとコピーして相手の言葉を返せるくらい集中して聴いていると、当然会話全体が見えてきます。話された事が抜けてない状態です。すると、どこが大切なのかも浮き上がってきます。

要約の効果2つ

1 整理がつく

きっちりと整理されている状態の写真

特に悩んでいると混乱している事も多いので、要約されるとそれだけで心の整理がつきます。

悩んでいる時を例えると、上の写真のように整理されている状態ではなく、ごちゃごちゃに混ざってどこに何があるのかわからない、大切なものや欲しいものがあるのかどうかもわからないような状態です。

的確に要約されると、どこに何があるのかスッキリとわかる状態になります。するとそれだけで今大切な事や、これからどうすべきかを話し手自身で気付ける場合もあります。

2 すれ違いが無くせる

要約した時に、もし間違っていればそこですれ違いを無くせます。すれ違いがあるまま会話が進んでいくと「わかってもらえている」に繋がりません。要約はこれをクリアにできます。

特に90分を超えるような長い会話であれば、会話の最後に要約があることで、ちゃんと全部わかってくれているんだなという実感を持ってもらえます。

まとめ

要約は傾聴において、「必ずしもやらないといけないもの」ではありませんが、「ちょっとごちゃっとしてきたな」と感じられた時や、カウンセリング・傾聴の締めで使うと効果的です。

難易度の高いスキルですので、的確な要約が出来るということは、傾聴のスキルがかなり高いともいえます。


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  • 執筆者

井上 隆裕

2004年よりプロの心理カウンセラーとして活動。2013年に独立開業。ジョイカウンセリングスクール代表。 運営者情報

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執筆者: 井上 隆裕