悩みを聞くと自分も同じようにつらくなる、自分の悩みのように受け止めてしまう時の対策2つ

相談者の悩みを聴くと、自分の悩みのように受け止めてしまい、心が重くなる場合があります。

話を聞いている最中だけでなく、相談が終わった後もその悩みを自分が抱えたかのように心配してしまうことにもつながりますが、こうならないための対策を2つ紹介します。

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相手の悩みを聴くと自分も同じような気持ちになる理由

同感の聞き方をすると、悩みを聞くと自分も同じようにつらくなります。

同感とは文字通り相手の感情と同じ感情になることです。

例えば相談者が

こないだ職場で上司からきつい言い方をされ、殴ってやろうかと思ったわ!

と言われ、

そんな事言われたんか!俺も腹立ってきた!

という感じで、私もそう感じるという聞き方が同感です。

相手に対しての思いやりが深い、やさしさが強いからこその聞き方ですが、この聞き方は相談者と同じ気持ちになるため、とても疲れます。

話を聞くと自分も相手の苦しみをそのままもらう結果になり、しんどくなります。

悩みを聞いても辛くならない聴き方2つ

1 同感ではなく共感で聴く

共感とは、

相手の気持ちを汲み取って伝えること

です。例えば先程の例のように

こないだ職場で上司からきつい言い方をされ、殴ってやろうかと思ったわ!

と言われた場合、共感で返すと

そんな事言われると、すごく腹が立つよね。

相手の気持ちを汲み取って返します。一見前者の同感と同じように見えますが、明確に違います。両者を英語にすると、違いがわかりやすいです。

  • 同感=I feel so too.(私もそう感じる)
  • 共感=You feel so.(あなたはそう感じているんですね)
そんな事言われたんか!俺も腹立ってきた!

の聞き方は同感です。

そんな事言われると、すごく腹が立つよね。

の聞き方の主語は「相手」であり、共感です。

実際に話を聞く、相談を受けた時に共感で「あなたは~」という主語をつけると距離がある感じを受けるため、主語を抜くことがほとんどですが、相手の気持ちを汲み取って返す聞き方が共感です。

共感で聞くと相手の辛さはそのままもらわないため、自分の悩みのように受け止めて苦しくなることはありません。

詳細:共感の使い方 |相手の気持ちを汲む方法

同感で聴くよりも負担が少ないのは間違いありませんが、共感で聞いても聴く側の感情は動くのが自然なため、プロのカウンセラーも心理カウンセリングであまりに不幸な体験を聞くと、聞いていて涙が流れることもあります。

ただしプロの心理カウンセラーは、そのような自分の感情に引っ張られて話が聞けなくなることはありません。その理由を次に解説します。

2 相手の思いと自分の思いは分ける(整理する)

心理カウンセラーも話を聞いている時、自分の中に色んな思いが出てくることがあります。

  • それについては私はこう思う
  • 私も以前同じような体験をして、その時はこう思った

など、自分の思いが出てくることがありますが、特に会話初期の信頼関係を築く時期では自分の思いは一旦横に置いておき、

  • 相談者はどう思っているか
  • 相談者はどう感じているか

を重視して聞いています。

会話中に相手が感じていることと、聞いていて自分の中に湧いてきた事は分けて(整理して)関わっています。

相手の思いと自分の思いは分けるからこそ共感ができるのですが、理屈ではそれがわかっていてもできない、相手の悩みを自分の悩みのように受け止めて苦しくなることがあります。

自分も同様の未解決の心の問題がある場合、整理して聞けない

心の問題は一旦は見ないようにして、フタをして生きることも可能ですが、過去の嫌な体験で生まれた未消化の心の問題がある場合、同じような体験をした人の話を聞くと、どうしてもその人の気持ちに触れられず、聞いていて自分が苦しくなることがあります。

これは相談者の悩みを聴くと自分の悩みのように受け止めてしまうと言うよりは、悩みを聞くことで自分の置いていた悩み(未消化の心の問題)が浮き上がってきて苦しくなる感じです。

他人のメンタルケアをする前に、まず自分のメンタルケアをしてくれ!

という自分からのメッセージともいえます。

この場合いずれにせよ共感ができないためそれ以上深いカウンセリングにもなりませんし、聞く側も苦しいので相談を続けてもお互い良い結果は生まれません。

心理カウンセリングを使って自分の未解決の心の問題に取り組むか、一旦相談を受けることから離れ、自分の心の問題は置いておくのも1つの方法です。

未消化の心の問題に取り組む事は、ある意味自分自身の嫌な体験や嫌な感情を思い返すことでもあり、心の体力を使います。そのため取り組める時期もあれば、そうでない時期もあります。

心の問題を抱えながら生きていくことが出来るのも人の強さですが、解決できるタイミングでクリアにすると心が軽くなります。人の心のサポートに携わらないのであれば一生放っておくのも1つですが、プロの心理カウンセラーを目指すのであれば仕事になりませんので、取り組める時期に取り組む必要があります。

まとめ

悩みを聞くと自分も同じように辛くなる時の対策として

  • 同感ではなく共感で聴く
  • 会話中の相手の思いと自分の思いは分ける

方法を紹介しました。

上記の方法でほとんどの場合、相談を受けて自分も相手と同じようにつらくなることはありませんが、プロでも相手のマイナスの感情の影響を全く受けないというのは難しいです。

共感で聞いてもかなり不幸な方が来られた場合、多少は聞く側もその影響を受けてしんどくなることはあります。ただしそれくらい不幸な方は、年に1人あるかないかのレベルです。


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  • この記事を書いた人

井上 隆裕

2004年よりプロの心理カウンセラーとして活動。2013年に独立開業。ジョイカウンセリングスクール代表。 運営者情報

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