傾聴の最も大きな効果は、相手の話を受け止めながら聴くことで、話し手の承認欲求が満たされることです。
承認欲求は人であれば誰しも持っている欲求で、自分のことをわかってもらえた、認めてもらえたという感覚です。これが満たされると、自己肯定感の向上にもつながります。つまり傾聴を適切に使えば、相手のマイナスの感情をクリアにできるだけでなく、自己肯定感向上のサポートにもなります。
そして人は自分のことを否定、評価せずに受け止めながら聴いてくれる人に安心感を持ち、より深い悩みを打ち明けることができます。
この記事ではプロの心理カウンセラーとして傾聴を20年使用している著者が、その経験から実感している傾聴の効果・メリットを5つ紹介します。
関連:傾聴とは
承認欲求が満たされる
アメリカの心理学者、ウィリアム・ジェームズ(1842~1910)は
人間の持つ性情のうちでもっとも強いのは、他人に認められることを渇望する気持ちである。
と言っています。
傾聴を適切に使うと承認欲求が満たされる理由として、
と感じられるためです。同時に話し手には、認めてもらえた、自分を尊重してくれたという感覚も生まれます。
特に幼少期に親に話を聴いてもらった経験が多いか、ほとんど話を聞いてもらえずに親の意見を押し付けられることが多かったかの違いは非常に大きいです。話を聞いてもらえないと満たされない感覚が生まれ、自己肯定感は低くなります。
それと同時に自分の意見を言う経験が減るため、自己主張がとても苦手になります。
自己肯定感が高まる
自己肯定感とは自分にOKを出せる感覚の事ですが、傾聴でこれが高まる理由として上記の承認欲求が満たされる事に加え、自分のマイナスの感情を受け入れられるようになるためです。
例えば誰かに対して怒りや恨み、憎しみを持っている場合、傾聴ではそれらの感情を共感しながら聞きます。
といった形で共感してもらえると、憎さを持っていていいんだな、感じてもいいんだなと受け止められ、マイナスの感情を持っている自分自身を肯定できるようになり、その結果として自己肯定感が高まります。
マイナスの感情は人であれば時に湧いてくる自然な感情です。プラスもあればマイナスもあります。傾聴では共感することで普段の生活では出しづらいマイナスの感情を出してもらえるように促し、感情の浄化をサポートします。
相手を的確に理解できる
傾聴を適切に使うと、相手を的確に理解できます。
傾聴ではオウム返しを使います。相手の言葉をそのまま返すだけですが、やってみると意外に難しさを感じる人が非常に多いです。
私自身食事の予約でお店に電話する時、第一声で
と伝えても、改めて名前や日時を聞き直されることは非常に多いです。一回言ったことを聞き直されると、話を聞いていなかったんだなという事がそれで伝わってしまいます。
傾聴を使うだけでこれをクリアにでき、顧客満足度は確実に高まります。
特に仕事の指示ですれ違いがあると大事になる場合もあります。私自身仕事で会議室の予約を取る事が多いのですが、こちらが伝えた日時を会議室運営側が間違って受け取り、面倒な事になった経験があります。
また、以前TV番組の探偵ナイトスクープでは、ある施設の園長が大切にしている樹齢30年のねむの木に「木を切ってくれ」と部下に指示を出したけれど、「枝を切ってくれ」というニュアンスが伝わっておらず、木そのものを切り倒された例が紹介されていました。
こういったすれ違いは、指示を受けた時にそれをオウム返しするだけで無くせます。
相手の問題点や求めている事、ニーズが明確になる
傾聴では、相手の方が話したいことを話して頂くのが基本ですが、何が問題なのかをクリアにするために、状況が明確になる質問、事実関係を整理する質問をしていきます。
特に悩みや苦しさが強い時はどうしてもそちらにエネルギーを取られ、自分の状況を客観的に見るのが難しくなります。
その時に感情を汲み取りながら聞いてもらえたり、状況が整理される質問をされることで自分自身が辛いと感じている事や、問題点を明確にすることができます。
問題点が明確になればなるほど、それをクリアにするためにはどうすれば良いか?も明確になります。
と感じられるケースがあるのはこのためです。
詳細:質問技法とは|傾聴・カウンセリングでの質問の仕方
あなただからこそ話せるという信頼関係を築ける
上記のように傾聴は、相手を的確に理解しようとする姿勢や、相手を尊重する姿勢が伝わる会話です。
普段の生活では出しづらいマイナスの感情も受け止めながら聞いてもらえるため、とても話しやすいと感じてもらえ、ラポール(絶対的な信頼関係)を築くことができます。ラポールが築けると
- より深い悩みを打ち明けてもらえる
- 問題解決に必要な情報、アドバイスを受け取ってもらえる
というメリットがあります。
悩みには比較的言いやすいものと、打ち明けにくい重い悩みがあります。ラポールがあるとより深い悩みを打ち明けてもらえるようになり、結果としてより納得感が強いゴールに繫がります。
また、傾聴時はアドバイスはしませんが、カウンセリング終盤では心の問題解決のためのアドバイス・情報提供するケースもあります。
たとえ正しい事を言われても、自分の事をわかってもらえていない人からのアドバイスは受け入れられませんが、傾聴され、自分の事をしっかり理解してもらえていると、納得して受け取れます。
まとめ
傾聴の効果として
- 承認欲求が満たされる
- 自己肯定感が高まる
- 相手を的確に理解できる
- 相手の問題点や求めている事、ニーズが明確になる
- あなただからこそ話せるという信頼関係を築ける
を紹介しました。
傾聴はコミュニケーションにおけるスキルであり、トレーニングすれば誰でも身に付きます。
カウンセリングだけでなく日常生活や仕事に活かすこともでき、汎用性が高い上に一生使える、役立つスキルです。