オウム返しとは、相手の方が言われた言葉をそっくりそのまま繰り返すことです。傾聴や心理カウンセリングで使用されることが多いですが、日常会話でも様々なケースで役立ちます。
的確にこのスキルを使うと、「聴いてもらえている」がさらに、わかってもらえていると感じてもらえる事につながり、信頼関係構築に役立ちます。
一見かんたんに見えますがやってみると難しく感じる方がほとんどで、的確にオウム返しするためには、一定のスキルが求められます。
この記事ではオウム返しのやり方と効果を解説します。
オウム返しのやり方と効果
やり方はシンプルで、相手の言葉が途切れたときに、それまで言われたことをそのまま繰り返します。
例えばもしあなたが友人から
と言われたら、
と繰り返します。
話が途切れないときは、うなずきとあいづちを使って聞き手は口を挟まずに聞きますが、途中でわからないことが出てきたり、会話の内容を忘れれば、基本的にはその都度確認します。
実際のカウンセリングでは↓のような形でオウム返ししてます。
心理カウンセリングでは、相談者が言われたことを一言一句コピーして返せるくらい集中して相手の会話を聴きます。
的確にオウム返ししようとすることで、理解しようとしてくれているという姿勢が相手に伝わるためです。
的確にオウム返しするのは意外と難しいです。試しに世間話で友人やご家族が20秒くらい話されたことを、すべて一言一句正確に覚えて返そうとしてみて下さい。かなり集中して、しっかり聞こうとしないと完璧には返せないはずです。
オウム返しは集中して聴きますので、ハッキリ言って慣れないうちはとても疲れます。座ってやりながら、汗をかく方も多くおられます。
そのくらい集中して相手の方に関わる姿勢が、信頼関係を築いていくポイントにもなります。
また、オウム返しを慣れない方がやると不自然な会話になりますが、その理由を解説します。
オウム返しで不自然な会話になる理由
理由はシンプルで、慣れないとどうしても言葉を繰り返すことのみに意識が向き、言葉が相手に届かないためです。対面で接していて、オウム返しとして声をかけられてはいるけれども、その言葉がどうしてもあさっての方向に飛んでいってしまいます。
慣れてくるとオウム返ししながら、その言葉を相手の表情や目を見て、相手に届けられるようになります。
↓の動画でも解説してます。
感情も汲み取りながらのオウム返し
傾聴するときには、返すのは言葉だけではなく、相手の感情も汲み取りながらオウム返しすると、話し手がわかってもらえているという感覚を持てます。
そのためには相手の方の言葉をすべて的確に返せるくらい聴いておくことが必要です。例えばこの記事の冒頭で出した例だと、
時と
時の気持ちは違います。
相手の方の言葉をすべてコピーできるくらい集中して聴くことが、感情も的確に汲み取っていくことにつながります。
オウム返しの使い所3つ
心理カウンセリングでは基本的に自分の内面を振り返りながら会話をするため、比較的オウム返しは使いやすいです。
日常会話でも効果を発揮する場面は多いですが、会話のすべてをオウム返ししていると、会話のやり取りやテンポが崩れる場合があります。
特に日常生活でオウム返しが役立つシチューエーションを3つ紹介します。
指示を受けた時
例えば仕事で上司から口頭で、
このプレゼン用紙、表紙だけカラーコピーで、ホチキス左上どめでパンチ穴なしで25部、16時までにコピーして私の机の上に置いといて
等と言われたら、それをそのままオウム返しします。仕事ですれ違いがあると、締切に間に合わなかったり、二度手間となり大きな損失になりますが、オウム返しするだけでそれを避けられます。
以前TVの探偵ナイトスクープで、保育園の園長から30年前に施設を創設した際に植えた「ねむの木」の「枝を切れ」と指示を受けた職員が、その木を根元から切ってしまったので何とかしたいという依頼が寄せられていました。
指示をオウム返しするだけで避けられたケースですが、これと同様のコミュニケーションのすれ違いは他にも多く起きていると思います。
日時、場所の約束時
例えば何らかの予約をしたり、受けた時にオウム返しがあるとすれ違いが無くせます。
以前私自身カウンセリングを貸し会議室で行っていた時、会議室の運営元に「●月●日●時は空いてますか?」と聞き、「空いてます」と言われたため部屋を予約したんですね。何となく上の空で会話されているような気はしましたが、相談者にそのカウンセリング実施日時を伝えました。
すると伝えた後に会議室の運営元から電話があり、「すみません、その日はやっぱり埋まってました…」と言われてしまいました。相談者もアレコレ言われると混乱しやすいです。
この一件があってから私自身何かを電話で予約するときは、相手側がその日時をオウム返ししてくれたなかったら「日時を復唱して頂けますか?」とオウム返しを求めています。
日時や場所のすれ違いがあると信用問題にも関わりますし、相手側にも迷惑がかかりますが、オウム返しするだけでそれを無くせます。
こちらが相手に何か質問をした時
これは相手に何か質問し、その返答をオウム返しするという意味です。例えば
という感じで返します。オウム返しすることで相手の回答を自分の中に落とし込めますし、返答した側としても誠実な印象を受けます。
やってはいけないオウム返し3つ
オウム返しされることで相手が傷つき、逆効果になるケースがありますので紹介します。
1 話し手が傷つく内容
1つ目は、話し手が傷つく内容です。例えば、
と言われた時に、
と、そのまま繰り返すと傷つきます。こういった場合は、
等と言葉を変えて返します。
「~してしまった」という返し
特に自己肯定感が低めの方は、「~してしまったんですね」というオウム返しをしがちです。
このフレーズは、例え相談者の方が使ったとしても、オウム返しの時は使わない方が良いです。
理由はシンプルで、「~してしまった」という言葉は、そうなった自分はダメだというニュアンスを含むためです。
特に聞き手自身の自己肯定感が低めだと、相談者の方がこの言葉を使っていないにも関わらず、このフレーズが付け足されることはよくあります。例えば
と言われたら、自己肯定感が低めの方の場合、
と返すことが、実はかなりの頻度であります。
こうオウム返しされると、緊張で声が震えた自分はダメなんだと、どうしても感じられます。
言葉が心に与える影響はとても大きいです。
「~してしまった」というフレーズは出来るだけ減らし、シンプルに事実を返すようにするだけで自分も相手も自己肯定感は高まります。
このフレーズは自分でも無意識に発していることがほとんどですので、まずは普段の会話で「~してしまった」というフレーズを使っていることを意識できると大きいです。
関連:自己肯定感が低い原因8つ|幼少期の親との関係、家庭環境の影響が大半
3 相手を否定する気持ちで返すオウム返し
例えば、
と言われた時に、それはダメだよねという相手を否定する思いで、
とオウム返しのつもりで返すと、傷つきます。この返しだと話し手にとっては、「もうこれ以上は絶対に話すものか」という気持ちが湧きます。
オウム返し含む傾聴技法は、相手と絶対的な信頼関係(ラポール)を築くために行うものであり、受容の姿勢と合わせて行います。
話が途切れないとき
話しやすい空気感の作り方がしっかり出来ていると、話が区切れる事なく止まらない方もいらっしゃいます。
そんな時は、うなずきとあいづちをしっかりと使いながら聴けばOKです。
ただ、話された事をコピー出来るくらいの理解度で聴けている状態と、そうでない状態とでは、その後の質問の仕方も変わってきます。オウム返しを身に付けるトレーニングでは、それほど話さない人を仮定して行ったほうが効果的です。
まとめ
話を聴かないと相手の方の事はどうしてもわからないものです。
いくら自分が似たような経験をしたことがあっても、似たようなケースを以前聴いたことがあっても、相手の方がつらいと感じておられる事や的確な状況は、話を聴かないと絶対にわかりません。
だからこそ、オウム返しをしながら一言一句逃さず、言われたことすべてを繰り返せるくらい集中して話を聴くことで相手の方が見えてきます。
その集中して相手に関わる姿勢が、相手の心を解きほぐしていき、「この人になら話してもいいかな」と感じてもらえ、信頼関係を築くことが出来ます。
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