傾聴・カウンセリングのトレーニングをやると、質問に困る人は非常に多いです。
相手が本当に悩んでいる、求めていることを知る質問をするためには、スキルが求められます。
私自身傾聴トレーニングに取り組み始めたとき、質問はとても苦手でした。2分も会話すると、相手の方に自由に話してもらえるような質問ができなくなり、沈黙の時間を作っていました。
どんな質問をするかで会話の方向性は大きく変わりますが、質問はスキルですのでトレーニングで身に付きます。
この記事では、傾聴・カウンセリングの初期で行う質問の方法について解説します。もちろん普段の会話にも活かせます。
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質問の種類について
傾聴やカウンセリングにおける質問は、大きく2種類に分けられます。オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンといわれ、これらを使い分けていきます。
質問のタイプ | オープンクエスチョン | クローズドクエスチョン |
概要 | 自由に話せる質問 | 返答が限定されている質問 |
メリット | 話したい内容を話せる | 答えやすい |
デメリット | 答えにくい場合有り | 自由に話せない |
それぞれ詳細を解説します。
オープンクエスチョンとは
オープンクエスチョンとは、相談者が自由に話せるタイプの質問です。開かれた質問とも呼ばれます。
例えば、
という質問だと話し手が話したい事を自由に話せます。
と言われた場合は、
という質問だと、自由に話せますのでオープンクエスチョンになります。
開かれた質問の例
- お話できること何でも結構ですのでお話頂けますか?
- 特にどういったことが今気になっていますか?
- どんなことが今しんどいですか?
オープンクエスチョンのメリット・デメリット
オープンクエスチョンのメリットは、話し手が話したいことを自由に話せる点です。話す範囲や内容はすべて話者の自由です。
同時にそれがデメリットにもなり、自由に話せる分話す内容を考える必要があり、答えにくい場合もあります。その時は答えやすい質問をします。例えば
と聞くと答えが限定されるため、話しやすいです。
クローズドクエスチョンとは
クローズとクエスチョンとは、上記のようなハイかイイエで答えられるタイプの質問や、年齢を聞く質問など、答えが限定されるタイプの質問です。閉じた質問とも呼ばれます。
オープンクエスチョンと比較して答える側はあまり考える必要がなく、答えやすい(話しやすい)のがメリットです。
デメリットは、話したい事を自由に話せない点です。また、クローズドクエスチョンで聞き手が聞きたいことばかり質問すると、誘導されているように感じられたり、圧迫感を受けることもあります。
閉じた質問の例
- 昨日はよく寝れましたか?
- 以前他のカウンセリングを受けたことがありますか?
- お薬は何か飲まれていますか?
私自身初めてカウンセリングに来られた方にお会いする時は、カウンセリングに入る前に
とクローズドクエスチョンで聞き、軽く話して緊張をほぐしてもらえるよう心がけています。
会話だけでなく、カウンセリングの事前シートに記入してもらう時も、
- 現在体調は「よい」「悪い」
- 昨日は「よく寝れた」「あまり寝れなかった」
- 以前他のカウンセリングを受けたことが「ある」「ない」
などクローズドクエスチョン方式でまず返答してもらい、その後現在気になっていることを書いてもらうようにしています。
基本的に傾聴ではクローズドクエスチョンではなく、オープンクエスチョン主体で関わっていきます。話し手に話したい事を選んでもらったり、自由に話してもらう事に重きを置いているためです。
ただ、オープンクエスチョン主体で会話を進めるのは、初めてだと意外に難しいです。
具体的なオープンクエスチョンの例
オープンクエスチョンには何でも自由に話せるタイプと、ある程度話す内容を区切ったタイプがあります。傾聴・カウンセリングの初期では、とにかく自由に話せるタイプが適切です。一例を紹介します。
- お話できること何でも結構ですのでお話頂けますか?
- 特にどういったことが今気になっていますか?
- どんなことが今しんどいですか?
ある程度話す内容を区切ったタイプの例も紹介します。
例えば「会社の人間関係で悩んでいる」という相談を受けたとします。
- どんな人との人間関係で悩まれているのか?
(上司?部下?同僚?すべての人?) - その人と、どんなことで悩んでいるのか?
(仕事のやり方?コミュニケーション方法?それ以外?) - 具体的にその人にどんなことを言われたのか?
(その時に相談者の方はどう対応されたのか?) - その時にどんな気持ちだったのか?
(気持ちを汲み取りながら質問していくと話しやすくなります)
質問でこういった状況を明確にしていくだけで、問題解決の糸口が見えてくる事も多々あります。
日常の悩み相談であれば、相談者の方も問題解決を望んでいる訳ではなく、自分の状況をわかって欲しい、我慢していた気持ちを理解して欲しい、ただ聴いて欲しいだけのことも多いです。
オープンクエスチョンで関わると、相手の方は自分の話したいことを話せるだけ話していいんだなと思えます。自由に話せる質問だと、自分のことを尊重されているように感じられます。
傾聴技法は何かを押し付けたり決め付けるわけではなく、相手の方に自由に話してもらい、自分自身が本当に感じていることや思っていることを見つめてもらうために使います。相手の方を尊重していることが、形として現れる技法です。
ただし、適切なオープンクエスチョンができれば、相談者がそれに対して必ず答えてくれるわけではありません。答えてもらうためのポイントを解説します。
質問のポイント3つ
傾聴時の質問のポイントは次の3つです。
- 話した内容を受け止めてから質問する
- 話される内容は「きっちりと受け止める心構え」で質問する
- 話したくない・話せないことは聴かない
1 話した内容を受け止めてから質問する
例えば
と言われたら、
と質問の前にまず共感の言葉を伝えた後で、さらに深いポイント(どんな細かいことを言ってくるのか等)を質問すると、答える側として話しやすくなります。
共感せずにさらに詳しい内容を聞くと、答える側としてはさらにつらい事を言っても、それを受け止めてくれるんだろうか?という不安感が出てきます。質問以外の他の傾聴技法
は別々のものではなく、すべてつながっているスキルです。
たとえどんなに適切な質問だったとしても、気持ちを汲み取らずにやると話し手の方は「話しても受け止めてもらえないな、無駄だな」と無意識のうちに感じられ、話す気がおきません。
2 話される内容は「きっちりと受け止める心構え」で質問する
聴き手にこの心構えがないと、無意識のうちに聴きたいことだけを聴く質問になりがちです。
というのも、オープンクエスチョンをすると話し手は自由に答えられますが、裏を返せば聴き手にとっては何を話されるか予測がつきません。
ひょっとしたら受け止められないくらい、もの凄いきつい内容を話されるかもしれません。それを受け止める心構えが無いと、ある程度答えの予測がつく質問ばがりになりがちです。
例えばカウンセリングの場面で、「仕事が見つからなくて困っている」と聞かれて、「どんな方法で仕事を探していますか?」と聴く感じです。
この質問だと返ってくる答えに予測がつきますので、質問する側としては安心感があります。しかし話し手が自由に話せる質問ではありません。
聴き手が聴きたいことを聴くのではなくて、話し手が問題と思っている点・話したいと思える点を質問することが傾聴時の質問するポイントになります。ポイントについては、オウム返しを意識して使い、
- 会話(言葉)の内容
- 相手の方の目の表情や姿勢
- 声のトーン
感じながらを聴いていれば必ず見えてきます。
3 話したくない・話せないことは聴かない
特に辛い内容であればあるほど、それを話せる時期とそうでない時期があります。辛いことと向き合うためには、心の体力を必要とします。
答えられない時期に無理やりそれに向き合わせようとしても、信頼関係が崩れてしまいます。
かなり突っ込んだ質問をする際は、「答えられる範囲で結構ですので~」と前置きをしてから質問することは私自身よくあります。
カウンセリング時の質問の方向性について
カウンセリングは「問題解決のための会話」ですので、何が問題なのかを明確にしていくと納得感の強いゴールを作れます。具体的には次のようなポイントが明確になる質問をしていきます。
- どんなことが一番つらかったですか?
- どんなことが一番大変でしたか?
- どんなことが一番苦しかったですか?
カウンセリングでこれらの質問が大切な理由は、2つあります。
1 話すことで感情が浄化される
苦しいことやつらいことは、深ければ深いほど普段の生活で接し続ける身近な人には話しにくいものです。
自分の状況や気持ち話し、わかってもらうことで気持が楽になります。
2 納得がいくゴールを作れる
例えば
という人に、
といきなり具体的な目標や未来を聴く質問しても、その人自身もその時点ではわからない、見えない、考えられないことがほとんどです。
本当に相談者の方が望む・納得がいくゴールを作るためには、現状のつらいことを具体的に見ていく必要があります。
というのも、辛いポイントを明確にすることで具体的にどうすれば楽になるのかが浮き彫りになるためです。
例えば職場の人間関係が苦しいのであれば、
- どんな人との関係なのか?
- 現状どんな対応が一番嫌なのか
- どんなことを言われて、(されて)どんな気持ちになっているのか
- 嫌な関わりをされた時の相談者の対応はどうなのか?
がわかると、ではどうすればそれをクリアに出来るのか?を一緒に考える事ができます。
辛いことや苦しい事を具体的に話してもらえればもらえる程、納得感のいくカウンセリングのゴールを作れます。
普段の生活で質問力を高めるために出来る事
「その人自身」が浮き上がる質問
例えばあなたが仲良くなりたい人に何か好きなこと、趣味を聞いたとします。もしある漫画が好きなのであれば、
- その漫画のどんなところが好きなのか?
- どのキャラが好きなのか?
- 好きなキャラのどんなところが好きなのか?
- その漫画をどのくらい(期間や量)読んでいるのか?
といったオープンクエスチョンをすると、その人自身が今求めているもの、あこがれている事が見えてきます。
相手が言った事を一歩深めるオープンクエスチョン
例えば家族から
と言われたら、
とオウム返ししてから
と言われた事に対して一歩深めるオープンクエスチョンを心がけると、質問の流れが作れます。さらに
- その答えてくれた事をオウム返し
- 共感の言葉を伝えられるケースであれば伝える
- さらにその事に対して一歩深めるオープンクエスチョンをする
という流れを作ると、話した側としても整理しやすくなります。
もちろん適切な質問だったとしても、上記で解説した傾聴技法が抜けていると、答えてくれません。※特に子供は敏感に「本当に聞く気があるのか?」をキャッチしています。
まとめ
質問は、会話の方向性を左右するとても大切なスキルです。
質問のスキルも大切ですが、オウム返しや共感の言葉を伝えた後にすぐ質問するのではなく、しっかりと相手の反応を見る事も大切です。
時には質問するよりも、相手が話すのを待って、相手を感じながら共にその場にいた方が良いケースもあります。
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