共感とは、相手の気持ちを汲み取って伝える事です。
例えば、
と言われたら、
と相手の気持ちを汲み取って返します。
上の例であれば、腹が立つよねという箇所が、相手の気持ちを汲み取っている共感の言葉になります。
人には様々な感情があります。楽しさや喜びといったプラスの感情もあれば、イライラや怒り、寂しさや不安などマイナスの感情もあります。
しかし、イラ立ちや怒り、悲しさ、寂しさ、憎しみ等のマイナスの感情は、社会生活の中では出しにくいです。無理に抑え込んだり溜め込んだりすると、メンタルを壊す結果にもなりますが、共感で関わると適切にその気持がケアされます。
この記事では、その共感する方法を紹介します。
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気持ちを汲む意味と目的
共感する理由として、相手の状況だけでなく、感情も受け止める・理解することで楽になってもらえるためです。
傾聴技法を使いながら話を聴いていると、ほとんどの方はご自身の状況をお話しして下さいます。
職場の人間関係で困っている、
恋愛でいつも同じような別れ方をする、
仕事が多すぎてストレスがたまっている 等など…
状況をわかってもらえるだけで少し楽になりますが、その状況の中で湧いてくる気持ちの部分もわかってもらえると、さらに楽になれます。
腹立たしさ、苦しさや寂しさや悲しさ等のマイナスの感情は、誰かにわかってもらえたり、受け止めてもらえるとそれだけでクリアになります。
共感のポイント
感情はわかってもえたり、受け止めてもらえるだけでクリアになるとはいえ、誰にでも自分自身の気持ちを出せるものではありません。
もし自分のつらい体験や悲しい体験を話して、それを受け止めてもらえなかったり、否定されたりすると余計に傷ついてしまうためです。
この人になら辛い体験を話しても大丈夫だろうと感じてもらうためには、聞き手の態度が重要です。そのポイントを3つ紹介します。
1 話し手をしっかりと「見る」
まずは、話し手の方の話しているときの表情や姿勢、視線をしっかりと見て気持ちを察していきます。
普段の生活でもやっている方は多いと思いますが、しっかりと集中して話し手を見て、聴かないと気持ちは読み取れません。
2 言葉の内容
2つ目は、話し手の方の言葉の内容から汲み取っていくことです。
これは前述している「繰り返すスキル」オウム返しが役に立ちます。
3 相手の気持ちを汲み取って伝える
3つ目は、話し手の方の感情を汲み取った言葉を伝えることです。
例えば、
ともし言われたら、
と相手の方の気持ちを察することばを伝えるスキルです。傾聴技法では、共感のことばとも言われています。
共感があるかないかの違い
例えば3歳のお子さんの育児を1人でしている主婦の方に、
と言われた場合、
と返された場合では、話した側の気持ちには大きな違いがあります。後者が共感した場合ですが、その方が「わかろうとしてくれてる」という感覚を持てて、気が楽になります。
カウンセリングや傾聴で共感する際は、主にマイナスの感情を汲み取って伝えます。
マイナスの感情にも様々な種類がありますので、具体的に解説します。
共感の言葉一覧
使用頻度高め
つらい、寂しい、悲しい、不安、あせる、悔しい、怖い、腹が立つ、苦しい、困る、悩む、大変、しんどい
使用頻度低め
心配、恐ろしい、戸惑う、迷う、憎い、イライラする、罪悪感、憂鬱
「大変」と「しんどい」は厳密にいうと状態を現す言葉ですが、共感的に使用する機会は多いです。
いずれもマイナスの感情を表す言葉なので、特に職場では口に出しにくい言葉です。そんな時に「腹が立ちますよね」と共感されると、腹を立てている自分でも良いんだなと感じられて、それだけで自己肯定感が高まって楽になれます。
最も汎用性が高い共感のことばは、つらいです。
使いやすいですが、何を話されても「つらいですよね」で返すと逆にわかってもらえていない感じを受けますので、その時その時の相手の気持ちにフィットした共感の言葉を伝えられるとベストです。
共感と同感の違い
同感とは
同感とは、文字通り話を聞いていて私も同じ気持ちになってきたという意味合いです。例えば
と言われたら、
というのが同感です。傾聴ではこちらは使いません。
相手と同じ気持ちになるのが同感ですので、相手の苦しさや辛さをそのまま負ってしまうことになります。
共感とは
共感とは、相手の気持ちを汲み取って伝える事です。
同感は主体が自分ですが、共感の主体は相手です。ですので上記の例であれば
と相手の気持ちを汲み取ります。
傾聴ではこちらを使います。相手の苦しさをそのまま背負うような辛さはありません。
まとめると、
- 同感=話を聞いていて私も同じ気持ちになってきた
- 共感=その状況だとあなたはこういう気持ちになりますよね
という意味合いです。実際に共感するときには、「あなたは」という主語をつけて伝えると距離感が出るので、この主語はカットして伝えるケースがほとんどです。
使いやすい例|陰口・悪口を聞いた時
特に職場の上司や同僚に面と向かって思った事は言いにくいので、そのうっぷんを晴らすために特定の人の陰口・悪口を言われる、聞かされるケースは多いです。
と言われた場合、
と同意、同感してしまうと、あなたも陰口を言っている同罪になってしまいます。
こういった聞き方をすると、同意した罪悪感も出てきますし、何よりも噂が広がるとあなたまでその上司に憎まれかねません。
こんな時は共感で関わるのが最も適切です。
共感の使用例
例えば
と言われた場合、
と共感します。できれば、オウム返しとセットで共感を入れられると効果抜群です。
愚痴を言ってくる人は「最低だと思わない?」とあなたに質問していますが、それに答える必要はありません。決して同意して欲しくて愚痴を言っているわけではなく、そう言われた時の自分の気持ちをわかって欲しくて、言っているだけです。
さらに時間がある場合
共感するだけでその方のストレス解消になりますが、さらに時間があれば状況が具体的になる質問をしていきます。
- 「なるはやで!」て言われてその後どうしたの?
- そう言われて上司には何て言ったの?
- 本音では上司に何て言ってやりたい?
等の質問をしていくと、その人と上司との関わり方が明確になります。もしいつも「はい、わかりました」と仕事を受けているのであれば、身体が持ちません。
ただ、特にアドバイスは求めておらず愚痴を聞いて欲しい、自分の気持ちをわかって欲しいだけの事も多いです。もしアドバイスするのであれば、必ずしっかりと共感してからでないと、今の自分を否定されている気持ちになり、余計な一言になりかねません。
関連:質問技法とは|傾聴・カウンセリングでの質問の仕方
よくある質問
伝えた共感の言葉が間違っていたら?
傾聴トレーニングをしていると
「察して伝えた言葉が間違っていたらどうするのか?」
と疑問を持たれる方は多いです。
的確に共感するためには、的確にオウム返しするのが有効です。感情を汲み取りながらのオウム返しで実例を交えて解説してます。
それに加え、話し手の表情や声のトーンに気を配る事で、「この気持ちではないのではないか?」という不安感はなくなります。
あっているかどうか自信が無い状態での共感は、しない方がよいです。温度感のない共感になり、その共感でわかってもらっていない事が伝わるためです。
関連:共感できない理由と改善方法
共感せず、どんな気持ちでしたか?と聞くだけで良いのでは?
共感の言葉を伝えるのではなく、「どんな気持ちでしたか?」と聴くだけでよいのではないか?
と思われる方もいます。
聴き手が話し手の気持ちを想像しにくいのであればそう聴くのもOKですが、察する事ができるのであれば、ストレートに「悲しいですよね」等と共感すると、そういう気持ちを言っても大丈夫なんだなと相手に感じてもらえます。
また、共感のことばは、モヤモヤしている時に自分が感じている事が明確に出来る効果もあります。それをサポートするのも傾聴者の役割の1つです。
相談者が言っていない感情の言葉は言わない方が良い?
相談者が「辛いです」等の言葉を発してない時に、それはお辛いですねと先にお声掛けするのは良いのでしょうか?
良いです。共感とは、相手の気持ちを汲み取って伝えることです。汲み取らないのであれば、シンプルなオウム返しです。
相手が発していない感情のことばも、カウンセラーが汲み取って伝えることで「マイナスの感情(例、怒り、恨み、悲しみなど)を出しても良いんだ」と感じられます。
なおかつそのマイナスの感情を持っていても良いんだと感じられ、話し手の自己肯定感も高まります。
相談者が発言したマイナスの感情の言葉のみ返す聴き方だと、シンプルな受け身の聴き方です。相談者が言っていない感情の言葉は伝えない形になりますので、深い悩みは打ち明けてもらいにくいです。
相談者にとって「わかろうとしてくれている」とも感じられにくいですし、「マイナスの感情を出しても良いんだ」とも感じられにくいです。
まとめ
共感の方法として
- 話し手の表情や姿勢、視線、声のトーンから気持ちを察する
- 話し手の言葉の内容から気持ちを汲み取る
- 話し手の感情を汲み取った言葉を伝える
を紹介しました。
共感があると、そこからさらに突っ込んだ内容を質問しても、答えてもらいやすくなります。