アメリカでのカウンセリング・カウンセラー事情は、日本と比較してどうなのかを紹介します。
アメリカではカウンセリングの敷居が低い
日本では比較的「カウンセリングは心が病んでいる人が受けるもの」という認識が強いです。うつ病や対人恐怖症などになって初めて利用するイメージですね。
アメリカではカウンセリングへの敷居が低く、精神疾患を治すために受けるだけではなく、「心の調子を整えるために」と気軽に受ける人が多いです。企業の経営者は専属のカウンセラーをつけている人もいるくらいです。「病んだ人だけが受けるもの」という認識ではありません。
アメリカでは心理カウンセリングに保険が効く
日本では医師から特定の心理療法を受けた場合のみ、保険が効きます。
詳細:心理カウンセリングが保険適用になる条件3パターン
しかし医師で実際に時間をかけてカウンセリングしてくれる人は多くありません。
アメリカでは基本すべてのカウンセリングに保険が適用できます。これが日本よりもカウンセリングがメジャーな1番の理由だと感じます。日本で保険適用外のカウンセリングとなると、1時間6,000~8,000円程度が相場ですが、これが2,000円程度になるのはとても大きいです。
また、アメリカでは相談者の収入によってカウンセリング代金が変動できるシステムをとっているカウンセラーもいます。カウンセリングを利用しやすいシステムですし、多くの人がカウンセリングの大切さを認識しているからこそ生まれたシステムだと感じます。
心理資格について
心理資格については、アメリカのほうがすべてにおいて日本よりもカウンセラーの地位が確立されています。
日本では2017年まではすべての心理資格は民間資格でした。(※2017年9月に国家資格となる公認心理師法が施行されました。)これに対してアメリカは、州毎に州立資格として制定されています。
地位が確立されているためか、アメリカのほうが心理資格取得に要する時間がかかります。日本では公認心理師資格を取得するためには最低6年間は必要ですが、アメリカではPsychologist(心理学の博士号)を取得するためには、最短10年必要です。
薬の処方について
アメリカでは州によってカウンセラーが薬を出せる権限がありますが、日本では医師免許を所持していない限り、すべての心理カウンセラーが薬を出す権限がありません。
カウンセラーの年収について
日本の臨床心理士で、約300~400万円ですが、アメリカでは約814万円!羨ましいですね。。。
参考:wikipedia
アメリカでは病院にアートセラピストが常駐している所もある
アメリカには、「American Art Therapy Association」という協会があり、そこが認定しているアートセラピスト資格を持った人が、病院に常駐している所もあります。院内に絵を自由に描けるスペースがあり、基本そこにセラピストが常駐していて、入院している人が描きたい時に自由に心の絵を描けます。
日本とアメリカのスクールカウンセラーの違いについて
アメリカは常勤職、日本のスクールカウンセラーは非常勤職員という違いがあります。
その他、組織体制、取り組み内容に特に違いがあります。
組織体制の違い
アメリカでは、スクールカウンセリングの職業を代表する全国的な組織があります。アメリカスクールカウンセラー協会(ASCA)といわれています。
ASCAでは1997年にスクールカウンセリングに関する全国基準を発行し、その実施に向けてスクールカウンセリングの評価基準を明確化しています。
日本では文部科学省がスクールカウンセラーを配置していますが、ASCAのような組織はありません。
取り組み内容の違い
アメリカでも日本と同じように悩みを抱えた生徒に対する個別対応は行っていますが、大きな違いはガイダンスカリキュラム(授業または小集団活動を通じた知識・態度・技能の育成)がある点です。
ASCAでは予防に力を入れており、そのためソーシャルスキル(自己理解、他者理解のサポート、自分の気持ちを言葉や態度で適切に表現する方法、コミュニケーションのスキル)のレッスンを週1ペースで実施している州もあります。
日本でも予防が大切な事は認知されていますが、上記のようなソーシャルスキルのカリキュラムを組み込んでいる自治体は決して多くなく、実施していても年間20~30時間程度です。
引用:ASCA,中野良顯訳,スクール・カウンセリングの国家モデル,2004
まとめ
アメリカでの心理カウンセラーの待遇はとても良いですね。
デメリットとしては、アメリカの大学でカウンセリングを学ぶと、費用がとてもかかる事だと感じます。
1997年~2001年の間にカルフォルニア統合学研究所に留学し、カウンセリング心理学修士課程を修了された方によると、学費:約400万円、家賃:約450万円、生活費:850万円、(航空券代別)合計1700万円程度かかっています。
参考書籍:カウンセラーへの長い旅