人生脚本とは|効率的に書き換える方法を心理学を通して解説

人生脚本(脚本分析)とは、無意識に繰り返してしまう人生の嫌なパターンを分析し、改善していくためのものです。

例えばいつも恋愛で同じような別れ方になったり、仕事で同じような辞め方を繰り返すケースがあります。これらは本人も無意識のうちに繰り返していて、自覚はありません。

こういった人生のパターンになっているものを、TA交流分析(1950年ごろにカナダの精神科医のエリック・バーンが創始)では人生脚本と呼んでいます。

この記事では人生脚本の詳細と、最も効率的に書き換える方法を解説します。

人生脚本の例|同じような失敗パターンが繰り返される

なぜ無意識のうちに嫌な人生のパターンを繰り返してしまうのかというと、本人も気付いていない価値感が原因です。

価値感が人生にどんな風に影響しているのかを、以前のアメリカの大女優「マリリンモンロー」のケースを通して紹介します。

というのも、マリリンモンローは結婚・離婚を3回繰り返しています。これにはレッキとした心理学的な理由があります。

結婚・離婚を繰り返した理由

マリリンモンローの生育歴(生まれてから育ってきた環境)が強く影響しています。

モンローは、1926年に父親のいない家庭で生まれ、母親が1人で働きながら生計を立てています。その過程でお母さんが精神病になり、入院。モンローは幼い頃に親戚や他人の家に預けられる事になり、10ヶ所以上の家を転々としています。

引用元:人生ドラマの自己分析

幼い時には養育者がいないと純粋に生きていけないので、愛情を注いでくれる存在はとても大切です。モンローの場合は、「この人は自分の事を守ってくれるのかな?信用できるのかな?」と感じられた辺りで、その人との辛い別れを何度も経験してます。

何度もその経験をするうちに、モンローの中に無意識のうちに「愛は途中で失われなければならない」という価値感が根付いています。そうでも思わないと、何度も繰り返される悲しい別れに耐えられなかったと思うんですね。

この価値感が、結婚離婚の繰り返し(人生の脚本)にどう影響しているのかを解説します。

親密になるほど、別れる時の辛さが思い出される

モンローは家族がいない境遇から、人一倍さみしさが強いので、人を求めます。求めて親密になればなるほど、別れる時は辛いですよね。

モンローの中には、無意識のうちに「愛は途中で失われなければならない」という思いが根付いているので、親密さが増せば増すほど別れたときのダメージを無意識のうちに想像してしまい、どうせ別れるのならこれ以上親密にならないうちにという思いが湧き上がってきて、別れを切り出してしまいます。

このような感じで、

結婚する(親密になる)→離婚する(今より親密になるのが怖くて自分から別れを切り出す)→寂しさは人一倍強いので、また恋愛を求めて結婚する→以下ループ

という人生のパターンが繰り返されます。こういったパターンを人生脚本と呼んでいます。

その他の人生脚本の例

我慢を重ねた結果、ブチ切れて人間関係を壊すパターン

特に恋人との関係で現れやすいです。言いたいことや自分のマイナスの感情を無意識に抑え込むクセがあり、最終的に積もりに積もった感情を爆発させてその人との関係性が終わるというパターンが繰り返されます。

育ってきた家庭環境で弱みを親にも言ったことがなく、マイナスの感情を言う経験がなく、しっかりしなければならない思いが無意識にあるとこうなります。

仕事を抱え込む傾向があり、最終的に心身を壊す

頼まれた仕事を自分が無理な状況でも断れなかったり、他人に仕事を振ることができない、他人に甘えることができず、自分自身を苦しい状況に持っていってしまうパターンです。

仕事を無理に抱え込む(頼み事を断れない)→自分が苦しくなり、心身を壊す

という人生のパターンが繰り返されます。

幼い時に甘えた経験がなく、役に立つことを求められる環境だと、無意識に役に立たなければならない思いが働き、自分よりも他人を優先させる傾向が強くあります。

人生脚本の特徴2つ

1 本人はその原因となっている価値感に気付いていない

無意識のうちに根付いてますので、本人はそれに気付いてません。その価値感に気付くことが問題改善の大きな一歩です。気付けば変えていけます。気付くためには心理カウンセリングが1番の近道です。

ちなみに人生脚本では、こういった不公平・否定的な価値感を禁止令と呼んでいます。代表的な禁止令を紹介します。

代表的な禁止令

存在してはいけない

虐待を受けたり、親から否定され続けた場合、「生きていていい」とは思えず、この禁止令が根付きます。

男(女)であってはいけない

男の子が生まれて、親戚や知人に「本当は女の子が欲しかったのよ~」等と母親から言われると、根付きます。本人も無意識のうちに男っぽい女の子になったりします。

成功してはいけない

子供の成功を素直に親が喜べないケースが繰り返されると根付きます。

健康であってはいけない

「普段は異常に厳しく、病気になったとたんに優しくなる」ということが繰り返されるとこの禁止令が根付き、親から愛されるために病気がちになります。

考えてはいけない

子供が食べたい物や欲しいものを選んでいる時に、「これにしなさい」などと選択の余地を与えない機会が続いたり、自分の意見を聞いてもらえない機会が続くと「考えないほうが愛されるんだ」と思え、この禁止令が根付きます。

自然に感じてはいけない

笑ったり、泣いたりした時に、常に「静かにしなさい!」と言われ続けると根付きます。無表情のお子さんに多いです。

禁止令の参考文献:杉田峰康、新しい交流分析の実際、創元社、2000、39p

ドライバー|無意識にかりたてられる価値観

禁止令の一種で、親から受け取ったメッセージで、無意識にかりたてられるような価値観があります。様々な悩みの根本原因になっている事が多く、人生脚本ではこれをドライバー(拮抗禁止令)とよんでいます。

禁止令と比較すると不都合なことばかりではありませんが、「~でなければならない」という縛りが無意識(その価値観があることに自分でも気付いていない状態)にあるため、これがネックとなって恋愛でいつも同じような別れ方をしたり、同じような理由で仕事を辞めるなど、嫌な失敗のパターンを繰り返してしまいます。

非常に多いタイプを2つ紹介します。

完璧でなければならない

両親から褒められる機会が少なく、優秀な兄弟と比較され続けると根付きます。「兄のように完璧でないと、今のままの自分では愛されない、完璧でないと愛されないんだ」という思いが繰り返された結果です。

常にしっかりしないといけない思いがあるため、弱みやマイナスの感情を出せず、非常に我慢しやすい傾向があります。

詳細:完璧主義になる原因と今すぐ出来る治し方(緩め方)5つ

役に立たなければならない

幼いときに何らかの事情で素直に甘えられなかったり、親や祖父母のグチを聞かされ続けるとこの思いが根付きやすいです。

他人優先で自分の思い、やりたい事を無意識に抑え込む傾向があります。自分がどう思うか・どうしたいかよりも、他人がどう思うかに意識がいくため、自分自身が見えなくなります。

2 繰り返される度に自己否定感が増す

人生脚本の特徴として、上記の禁止令やドライバーがあると、接する人や状況が変わっても同じような失敗を繰り返し、その度に「自分はダメだ」と自己否定を何度も味わう結果になります。

生きる上で苦しさがどうしても強くなるため、不都合な脚本は、変えられると圧倒的に生きやすくなります。

書き換える方法

人生脚本は、禁止令(育ってきた環境で身につけた否定的な価値感)が原因となって、自分でも気付かないうちに不都合な人生のパターンを繰り返してしまいます。改善方法は

  1. 人生において同じような失敗を繰り返している場合、それぞれの状況を整理する。
    (自分がどのように行動・発言し、対象の相手はどのように行動・発言していたか)
  2. その失敗の元になっている自分を苦しめる価値観(禁止令)を把握する
  3. 育ってきた家庭環境を振り返り、その価値観が根付いた理由を掴む。
    (同時に当時の本音、満たされなかった思いも振り返り、クリアに出来るとベター)
  4. その価値観を緩める
  5. どう生きたいかをイメージする

です。1人でやるよりも、交流分析が使える心理カウンセラーと一緒にやると自分の内面を見つめやすいです。

まずは禁止令に気付くことが改善の第一歩です。というのも、自分でもネックとなっている価値観があることに気付いていないからこそ、嫌なパターンを繰り返してしまいます。

その思いを持っている事に気付いているかそうでないかは大違いで、気付けるとそこから変えられます。

気付けた後は、自分の事を好きになれない価値観は、緩めていきます。

「完璧でなければならない」→「完璧であった方が良い」

という感じです。

その後、本当はどう生きたいか?をしっかりと見つめることも大切です。1人では難しい事もあるので、思い当たる方は信頼できるカウンセラーと一緒になって取り組むのがお勧めです。

書き換える時の注意点

ネックとなっている価値観を緩める時に注意すべきことがあります。それは

今まで続けてきた生き方なので、急には変えにくい

という事です。人生脚本の根本原因になっている価値観は、それまで数十年無意識に続けてきた生き方のクセです。

数十年続けてきたものを、今すぐにガラッと変えるのは難しいです。ただし、少しづつであれば緩めていけます。

また、ネックとなっている価値観は、それまではある意味そうする必要があって身に付いたものです。

「感じてはいけない」と思わないと生きていけない環境だったり、「役に立たなければ愛されない」とその場を生きるために必要があって身に付いた価値観です。

人生脚本と向き合うのは、その時はそうせざるを得なかった生き方を見つめ直し、今、これからをより幸せに生きていくためのきっかけでもあります。

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  • この記事を書いた人

井上 隆裕

心理カウンセラー、傾聴トレーナー、2004年からプロの心理カウンセラーとして活動し、2013年に独立開業。 詳細なプロフィール

-TA交流分析

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