脚本分析とは、無意識のうちに繰り返してしまう人生のパターンを分析し、改善していくためのものです。
例えばいつも恋愛で同じような別れ方になったり、仕事で同じような辞め方を繰り返すケースがあります。これらは本人も無意識のうちに繰り返していて、自覚はありません。
こういった人生のパターンになっているものを、TA交流分析では人生脚本と呼んでいます。
同じパターンを繰り返してしまう理由
なぜ無意識のうちに嫌な人生のパターンを繰り返してしまうのかというと、本人も気付いていない価値感が原因です。
価値感が人生にどんな風に影響しているのかを、以前のアメリカの大女優「マリリンモンロー」のケースを通して紹介します。
というのも、マリリンモンローは結婚・離婚を3回繰り返しています。これにはレッキとした心理学的な理由があります。
結婚・離婚を繰り返した理由
マリリンモンローの生育歴(生まれてから育ってきた環境)が強く影響しています。
モンローは、1926年に父親のいない家庭で生まれ、母親が1人で働きながら生計を立てています。その過程でお母さんが精神病になり、入院。モンローは幼い頃に親戚や他人の家に預けられる事になり、10ヶ所以上の家を転々としています。
引用元:人生ドラマの自己分析
幼い時には養育者がいないと純粋に生きていけないので、愛情を注いでくれる存在はとても大切です。モンローの場合は、「この人は自分の事を守ってくれるのかな?信用できるのかな?」と感じられた辺りで、その人との辛い別れを何度も経験してます。
何度もその経験をするうちに、モンローの中に無意識のうちに「愛は途中で失われなければならない」という価値感が根付いていっています。そうでも思わないと、何度も繰り返される悲しい別れに耐えられなかったと思うんですね。
この価値感が、結婚離婚の繰り返し(人生の脚本)にどう影響しているのかを解説します。
親密になるほど、別れる時の辛さが思い出される
モンローは家族がいない境遇から、人一倍さみしさが強いので、人を求めます。求めて親密になればなるほど、別れる時は辛いですよね。
モンローの中には、無意識のうちに「愛は途中で失われなければならない」という思いが根付いているので、親密さが増せば増すほど別れたときのダメージを無意識のうちに想像してしまい、「どうせ別れるのならこれ以上親密にならないうちに」という思いが湧き上がってきて、別れを切り出してしまいます。
このような感じで、
という人生のパターンが繰り返されます。こういったパターンを人生脚本と呼んでいます。
人生脚本の特徴2つ
1 本人はその原因となっている価値感に気付いていない
無意識のうちに根付いてますので、本人はそれに気付いてません。その価値感に気付くことが問題改善の大きな一歩です。気付けば変えていけます。気付くためには心理カウンセリングが1番の近道です。
ちなみに人生脚本では、こういった不公平・否定的な価値感を禁止令と呼んでいます。代表的な禁止令を紹介します。
代表的な禁止令
存在してはいけない
虐待を受けたり、親から否定され続けた場合、「生きていていい」とは思えず、この禁止令が根付きます。
男(女)であってはいけない
男の子が生まれて、親戚や知人に「本当は女の子が欲しかったのよ~」等と母親から言われると、根付きます。本人も無意識のうちに男っぽい女の子になったりします。
成功してはいけない
子供の成功を素直に親が喜べないケースが繰り返されると根付きます。
健康であってはいけない
「普段は異常に厳しく、病気になったとたんに優しくなる」ということが繰り返されるとこの禁止令が根付き、親から愛されるために病気がちになります。
考えてはいけない
子供が食べたい物や欲しいものを選んでいる時に、「これにしなさい」などと選択の余地を与えない機会が続いたり、自分の意見を聞いてもらえない機会が続くと「考えないほうが愛されるんだ」と思え、この禁止令が根付きます。
自然に感じてはいけない
笑ったり、泣いたりした時に、常に「静かにしなさい!」と言われ続けると根付きます。無表情のお子さんに多いです。
禁止令の参考文献:杉田峰康、新しい交流分析の実際、創元社、2000、39p
ドライバー|無意識にかりたてられる価値観
禁止令の一種で、親から受け取ったメッセージで、無意識にかりたてられるような価値観があります。様々な悩みの根本原因になっている事が多く、人生脚本ではこれをドライバー(拮抗禁止令)とよんでいます。
禁止令と比較すると不都合なことばかりではありませんが、「~でなければならない」という縛りが無意識(その価値観があることに自分でも気付いていない状態)にあるため、これがネックとなって恋愛でいつも同じような別れ方をしたり、同じような理由で仕事を辞めるなど、嫌な失敗のパターンを繰り返してしまいます。
非常に多いタイプを2つ紹介します。
完璧でなければならない
両親から褒められる機会が少なく、優秀な兄弟と比較され続けると根付きます。「兄のように完璧でないと、今のままの自分では愛されない、完璧でないと愛されないんだ」という思いが繰り返された結果です。
常にしっかりしないといけない思いがあるため、弱みやマイナスの感情を出せず、非常に我慢しやすい傾向があります。
役に立たなければならない
幼いときに何らかの事情で素直に甘えられなかったり、親や祖父母のグチを聞かされ続けるとこの思いが根付きやすいです。
他人優先で自分の思い、やりたい事を無意識に抑え込む傾向があります。自分がどう思うか・どうしたいかよりも、他人がどう思うかに意識がいくため、自分自身が見えなくなります。
2 繰り返される度に自己否定感が増す
人生脚本の特徴として、上記の禁止令やドライバーがあると、接する人や状況が変わっても同じような失敗を繰り返す結果になり、その都度「自分はダメだ」という自己否定の感覚を強く受けます。
必要以上に苦しさを味わうため、不都合な脚本は変えていったほうが良いです。
改善方法
人生脚本は、禁止令(育ってきた環境で身につけた否定的な価値感)が原因となって、自分でも気付かないうちに不都合な人生のパターンを繰り返してしまいます。改善方法は
- ネックとなっている禁止令(価値観)に気付く
- その価値観を緩める
- どう生きたいかをイメージする
です。まずは禁止令に気付くことが改善の第一歩です。というのも、自分でもネックとなっている価値観があることに気付いていないからこそ、嫌なパターンを繰り返してしまいます。
その思いを持っている事に気付いているかそうでないかは大違いで、気付けるとそこから変えていけます。
気付けた後は、自分の事を好きになれない価値観は、緩めていきます。
「完璧でなければならない」→「完璧であった方が良い」
という感じです。
その後、本当はどう生きたいか?をしっかりと見つめることも大切です。1人では難しい事もあるので、思い当たる方は信頼できるカウンセラーと一緒になって取り組むのがお勧めです。
改善時の注意点
ネックとなっている価値観を緩める時に注意すべきことがあります。それは
という事です。数十年続けてきたものをすぐに変えるのは難しいですが、少しづつであれば緩めていけます。
また、ネックとなっている価値観は、それまではある意味そうする必要があって身に付いたものです。
「感じてはいけない」と思わないと生きていけない環境だったり、「役に立たなければ愛されない」とその場を生きるために必要があって身に付いた価値観です。
人生脚本と向き合うのは、その時はそうせざるを得なかった生き方を見つめ直し、より幸せに生きていくためのきっかけでもあります。