共依存の大きな特徴は、頼る側、頼られる側のお互いが苦しい点です。
頼る側(依存する側)は、自立していないため、この先離れたらどうなるだろうという漠然とした不安感が付きまといます。
頼られる側(依存される側)は、世話を焼くことで相手よりも優位に立たないと、自分を保てない苦しさがあります。
一緒にいても苦しいけれどその相手から離れられなかったり、気付かないうちに自分自身をすり減らすような行動をとっていたり、共依存の苦しみは独特のものです。
私自身も共依存で苦しんだことがありますが、例えるならば、泥沼に太ももの付け根までハマった足を引き抜こうとするけれども、引き抜けず少しづつ深みに沈んでいくような感じでした。
この記事では、なかなか抜け出せない苦しい共依存の仕組みと、そこから抜け出す方法を紹介します。
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共依存の仕組み
共依存の関係はシンプルです。
依存する側
誰かに頼らないと生きていけない。(心配をかける、困らせる)
依存される側
助けてやらなければいられない。(世話を焼く、支える)
お互いに不足している部分を補い合っているため、一見問題が無いように見えますが、共依存の場合は不安感や苦しさが加わります。
頼る・頼られる、支える・助けるという関係は人には欠かせないものですが、共依存を克服していく上で
- 依存の関係が苦しくなるのはどういったときなのか
- なぜ依存することで苦しくなるのか
を掴んでおくと、納得感を持って克服方法を実行出来ます。これをまず掲載の許可を頂いているカウンセリングのケースを出して紹介します。
20代半ばの男性のKさんは、過去の彼女に対する後悔を何とかしたい、過去の出来事が心にひっかかって何とかしたいという思いからカウンセリングに。Kさんは「誰かの役に立ちたい」という思いが強く、福祉関係の仕事についていました。
過去に交際していたのは、20代女性のA子さん。A子さんは、幼い時に母親から悲しい体験を受けていた方でした。交際したとき、A子さんは両親とも音信不通で身寄りがなく、切実に恋人が欲しい状態。A子さんからKさんに対するアプローチが強く交際することに。
Kさんは、幼いときに親から悲しい体験を受けたAさんの心の傷を自分が癒やしたい、「何もかもどうでもいい」が口癖で、いつも投げやりなA子さんを自分が変えたい!と考えていました。
交際は2ヶ月ほど続きましたが、Kさんは「好きになりきれない」と感じ、A子さんに別れを告げました。しかしA子さんは身寄りもいないため、絶対に別れたくなかった。そこでA子さんがとった行動は、「妊娠した」という嘘をKさんに告げること。
Kさんは迷いつつも結婚を決め、A子さんと同棲をスタート。しかし一緒に暮らしてみて、どうしてもA子さんとこの先一生一緒にいたいとは思えない。断腸の思いでKさんはA子さんに別れを告げます。
その次の日同棲していたアパートから出る準備のために、アパートに入ったKさんの目に入ったのは、机の上にあった30錠ほどの市販薬を開けたあとの容器。すぐ隣には横たわるA子さん。
幸い大事には至りませんでしたが、A子さんはKさん無しには生きていけないくらいの精神状態。
カウンセリングは、このことに対するKさんの「後悔、罪悪感をなんとかしたい」というところからスタートしています。
A子さんは、「誰かに頼らないと生きていけない」という不安感や寂しさやが強く、ただ生きている事が苦しい状態です。
Kさんは、そんなA子さんを「助けてやらなければ」という思いから恋愛がスタートしていますが、別れを告げる時は断腸の思いでした。交際中にはKさんは、A子さんが楽に生きられるように様々な事をしましたが、ほとんど変わらないA子さんに対して無力感を抱かずにはいれませんでした。
共依存は、「誰かに頼らないと生きていけない」という側が苦しいのは理解しやすいのですが、助ける側も苦しいのには2つの理由があります。
助ける側が苦しい2つの理由
1つ目は、「誰かに頼らないと生きていけない」という側の思いが強ければ強いほど、離れるのが拒みにくいことです。特にA子さんの場合は、妊娠しているという嘘をついてでもKさんから離れたくない、Kさんと一緒でないと自分を保てないほどの思いです。そこまで追いすがられると、離れるのもとても苦しいものです。
2つ目は、なぜ「助けてやらなければいられない」という思いが湧くのかに関係しています。「助けてやりたい」ではなく、「助けてやらなければいられない」のです。
A子さんと交際していたKさんは、その後のカウンセリングの中でこんな事を言っています。
実は助けること、世話を焼くことで
- 誰かの助けになることで初めて自分の価値を実感出来る
- 相手よりも優位に立ちたい
- 相手を自分のコントロール下に置いておきたい・支配していたい
という思いが満たせ、自分に対しての自信の無さを保てるメリットがあります。
「誰かに頼らないと生きていけない」という人と一緒にいると、支え切れない感じがして苦しいけれども、その人から離れるのも自分自身の価値が見い出せなくて、自分を保てない感じがして葛藤があります。助ける側も助けることで相手に依存しています。
共依存は恋愛や親子関係で現れやすいですが、助ける側には、
相手の行動をコントロールしたい
という思いがとても強いケースが多いです。他人の行動はどうこう出来るものではありませんので、変わらない相手に対しての自分自身の無力感も出てきます。
どんなことが苦しいのか?
依存する側の苦しさ
誰かに頼らないと自分を保てない。頼っていても精神的に自分の足で立てれないのでどこかに不安感がある。
依存される側の苦しさ
支え切れない時に無力感を感じる。誰かに頼られていないと自分の価値が無い感じがする。自分の時間が持てない。
という不安感や苦しさがお互いにあります。特に恋愛などで
一緒にいると苦しいけれども離れたくない
という思いが働くときは、この葛藤があるからです。この関係から抜けたいとも思うけれど、抜けられないというジレンマを感じます。
共依存から抜けるためには、まず依存していることに気付くことが大切です。依存しやすい人の特徴を次に紹介します。
依存しやすい人の特徴
- 常に他人の顔色をうかがい、機嫌を損ねないようにサービスしてしまう
- 自分ひとりで中々決められない
- 自分よりも相手の意見を尊重しやすい
- 「嫌」と断るのが苦手で、対立を避けようとする
例えば、親であっても子供の顔色を伺って、子供に嫌われないようにという思いから世話を焼く傾向もあります。
なぜ依存しやすい人は上記のような行動をとりやすいのかを解説します。
依存する理由
幼いときの養育環境が大きく関係していることがとても多いです。
特に親から悲しい体験を受けたり、子供に物事を決めさせる機会が少なかったり、押さえつけられる機会が多いといった親に支配されるような環境だと、ビクビクしながら親の顔色を伺わざるを得ません。幼い時から自分の思いや、やりたい事に意識を向けることよりも、親の機嫌を伺わないと愛情がもらえない。上のケースで紹介したA子さんは、まさにこの環境でした。
幼い時にそんな環境で過ごすと、自分よりも相手の思いを優先しやすくなって当然です。
その他シンプルに若いと、まだ自我が確立出来ていなかったり、精神的に自立しきれていない事も多くなるので、依存や共依存の悩みは若い人に多いです。
次に共依存を克服する方法を解説します。
共依存を克服する3つの方法
些細なことから自分で決断していく
依存しやすい人は、物事を自分で決めるのが得意ではなく、決めることを人に任せがちな傾向があります。それを繰り返していると、心理的にも相手に依存する状態になりますので、些細なことから自分で決めていくことが共依存を克服する大切な一歩になります。
もちろんなかなか決められない時には、「今は決めない、10日後までに決める」という決めないことを決めるという選択も1つです。
何を食べるか、何を飲むか、どこに行くかといった日常の些細なことから出来るだけご自身の選択を大切にしていってみて下さい。
自分の決断力がつくことで、心理的にも自立していくことが出来ます。決してベストの選択でなくとも大丈夫です。大事なのは、自分で決める回数を増やすことです。自分で決めて、その決めたことの責任を自分で負っていくことで、他の誰かに依存するのではなく、自分で選んだという実感の積み重ねが心理的な自立につながっていきます。
たとえささいな選択であっても、頻繁に行うことで、「自分で環境をコントロールしている」という意識を、意外なほど高めることが出来る。
シーナ・アイエンガー(大学教授) 心が楽になる、必ず元気が出る言葉41選より
自分の思い・気持ちを表現する、主張出来るようにする
依存しやすい人は、相手の気持ちに合わせることはとても得意です。ただ時に相手の気持ちを尊重しすぎて自分の気持ちを抑えこんだり、気が付かないうちに無理を積み重ねて自分をすり減らすような行動をとることがあります。
特に他人に嫌われたくないと思ったり、無意識のうちに相手を喜ばせようと思った時に、自分の本音を抑えて、建前で相手に合わせすぎて疲れる事も。
人との関係で人を傷つけない自己表現や、罪悪感を持たずに要求を拒んだり、怒ったり、自分自身のために自分の思いを伝える、主張することはとても大切なことです。
他人の評価が気になると、自己主張しにくくもなります。
自分自身の思いや、「本音」を大切に見て、出来るだけそれを表現していくことで、誰かに依存せずにすむ自分自身を構築していくことが出来ます。
1人の時間や1人での行動も大切にする
誰かと一緒にいないと、休みの日に何も予定がないと、落ち着かない状態のときもあるかもしれません。ご自身がやっていて楽しめること、1人の時間や1人での行動も是非大切にしていってみて下さい。
自分自身の1人での時間や行動も大切に出来ると、同じように他の人の1人の時間もより大切に出来るようになりますので、誰かに依存しなくても、落ち着ける時間が少しづつ増えてきます。
共依存の相手がいなくなったらどうなる?
特に依存する側の方は、自分の人生を相手に預けているような状態でもありますので、相手がいなくなることに対する不安感は大きいです。
依存する相手がいなくなったら、ある意味今の状態・今の自分を変えるチャンスでもあります。他の依存する相手を探すこともできますが、自立する良い機会です。
特に経済的な自立は大きいです。依存している相手がもし嫌になったら、その相手から離れやすくなります。
共依存の状態を変えるのはお互い苦しさが伴いますが、続けるのもしんどいです。依存する相手がいなくなった時は、身体と心を休めた後、自分にとって幸せな状態を考える良い機会です。
まとめ
- 些細なことから自分で決断していく
- 自分の思い・気持ちを表現する、主張出来るようにする
- 1人の時間や1人での行動も大切にする
の3つを紹介しました。
上記以外に、自己肯定感が低いと共依存を引き起こしやすくなります。
関連:自己肯定感が低い原因7つ|幼少期の親との関係、家庭環境の影響が大半
共依存で苦しい方は、是非上記のご自身のやれることから実行していってみて下さい。誰かに依存しなくても生きていける自分自身を劇的に、必ず作っていくことが出来ます。
お一人での解決が難しい場合、お気軽にオンラインカウンセリングをご活用下さい。本記事著者の井上が担当しております。
関連:依存されやすい人の特徴・心理と依存された場合の対応法3つ
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