心理カウンセリングが保険適用になるケースは、かなり限定されていますがあります。
結論からお伝えすると、以下のいずれか1つを満たせば保険適用になります。
上記ケース以外は実費です。※DV被害を受けておられる方は、国の機関で無料で受けられます。詳細:お金が無くてカウンセリングを受けられない時の対処法4つ
共通しているのは、医師からのカウンセリングという点です。それぞれ詳細を解説します。
うつ病等の気分障害と診断された方のケース
具体的には次の症状と診断される必要があります。
うつ病等の気分障害、不安障害[強迫性障害、社交不安障害、パニック障害又は心的外傷後ストレス障害(PTSD)]
引用:厚生労働省 平成28年度診療報酬改定 P104(参照2019-04-12)
※以前は医師から認知行動療法が実施された場合、「うつ病等の気分障害」のみが保険適用でしたが、平成28年より不安障害も追加されています。
この症状に対して医師による認知行動療法、または精神分析療法が実施される場合、適用されます。
うつ病(気分障害)は診断が非常にあいまいな症状です。厚生労働省の調べによると
1996年から2001年までの5年間で2倍以上に増加
しています。通常の症状ならあり得ない増加率です。
参照元:厚生労働省 精神障害者に対する医療の提供の現状 P4(参照2019-04-12)
ネット上ではメンヘラ等という言葉も見られますが、落ち込んだり不安で眠れなくなることは、人であれば一生のうちに何度かあって自然だと思います。
特定の精神疾患と診断され、医師から通院・在宅精神療法を受けた場合
こちらのケースは、厚生労働省資料、保険診療の理解のために(2018) P34にて保険診療になると定義されています。
特定の精神疾患とは、ICD-10(国際疾病分類)の第5章「精神及び行動の障害」に該当する疾病とされており、代表的なものは以下になります。
統合失調症、気分障害、双極性感情障害、神経症(不安障害)、中毒性精神障害(アルコール依存症等)、摂食障害、性同一性障害、心理的発達の障害等
引用:厚生労働省 ICD-10(国際疾病分類)第5章(参照2019-04-12)
こちらはうつ病ほど診断のあいまいさがありません。統合失調症であれば、見えないものが見えたり、本来無い音が聞こえたりします。
通院・在宅精神療法とはいわゆる一般的なカウンセリングで、聴くのみではなく、社会適応能力の向上を図るための指示、助言等の働きかけを継続的に行います。
このケースにはさらに注意事項があり、
精神科を標榜する保険医療機関の、精神科を担当する医師が行った場合に限り保険算定。
とされています。※通院の場合のみ。入院の場合は異なります。
医師が標準型精神分析療法としてカウンセリングしてくれるケース
標準型精神分析療法とは、「なぜその出来事が悩みとなるのか?」をしっかりと分析する療法です。
例えば職場の部下に対しての許せない気持ちが強ければ、そのことについてしっかりと傾聴した後、「許せないということで他に何か思いつく(連想する)ことはありますか?」等と質問して、心の深い部分を見つめていきます。
医師によっては、薬の処方無しで実施してくれる場合もあります。(著者の場合がそうでした)
厚生労働省の資料によると、標準型精神分析療法の場合、1回45分を超えないと、保険点数として算定されません。儲けが少なくなるからか、医師がじっくりと話を聞いてくれるところは多くありません。近くにそういったところがあれば、ラッキーだと思います。
ここまでは、医師がカウンセリングを行う場合のみ保険適用されるという事で紹介しましたが、民間資格である臨床心理士のカウンセリングでも保険が適用されるケースもありますので、詳細を解説します。
公認心理師によるカウンセリングで保険が適用されるケース
精神科医と公認心理師が共同で精神療法を行っている場合のみ健康保険が適用されます。
公認心理師単独でのカウンセリングには、どんな心理療法だろうと一切保険は適用されません。病院、私設のカウンセリングルーム共に適用されません。
精神科医師等と臨床心理技術者が共同で精神療法を行う場合は診療報酬制度の対象であるが、臨床心理技術者が単独で行う精神療法は、診療報酬制度の対象外である。
引用:厚生労働省 PTSD等治療に係る医療保険制度について P18(参照2019-04-12)
小児特定疾患カウンセリングも保険適用
2020年より、小児特定疾患カウンセリング(発達障害等、児童思春期の精神疾患)の場合、公認心理師によるカウンセリングも保険適用になっています。
条件が3つあり
- 初回のカウンセリングは医師が行う
- 20分以上のカウンセリングに適用される
- 3ヶ月に1回は医師がカウンセリングを行う
とされています。
引用元:厚生労働省令和2年度診療報酬改定の概要 P17(参照2020-09-02)
臨床心理士では保険適用にならない
2018年以降、診療報酬上評価する心理職について、従来の「臨床心理技術者」(臨床心理士)から「公認心理師」に統一されています。
参照:厚生労働省 平成30年度診療報酬改定 P5(参照2020-09-02)
つまり、臨床心理士のカウンセリングでは保険が効きません。
※ 2019年3月末まで保険医療機関で従事していた臨床心理技術者(臨床心理士)は、当面の間公認心理師とみなされます。
保険適用の場合の料金
2割負担または3割負担になり、60分程度だと1,000~3,000円程度になる場合が多いです。
私自身以前精神分析療法としてカウンセリングしてもらっていた時は、50分で1,500円程度でした。(3割負担)
病院によって変わりますので、詳細は直接確認してみて下さい。
まとめと補足
上記以外にも入院精神療法が実施された場合保険が効きますが、レアケースと思いますので詳細は省きます。
心理カウンセリングに保険が適用されるのは、医師によるカウンセリングで、上記の特定の精神疾患と診断された場合のみです。
じっくりと30分以上の時間をかけてカウンセリングしてくれる医師は、現実それほど多くありません。
国家資格として公認心理師資格がスタートしていますが、近いうちに公認心理師単独でも保険が適用されるようになるかもしれません。
ただし、公認心理師は基本的に医療関係が対応分野です。例え公認心理師単独で保険適用されるようになっても、うつ病や心身症、パニック障害など、日常生活に支障をきたすような状態になってからのカウンセリングに保険が適用されるのは今と変わりません。
それ以外の恋愛の悩みや、自己肯定感を高める目的でのカウンセリング、各種症状にまで発展させないための予防的なカウンセリングに保険が適用されるのは、現実的ではないと感じます。
保険適用のクリニックが少ない理由
理由はシンプルで、長時間のカウンセリングよりも3分程度の短時間の診察と投薬の方が利率が高いためです。↓の動画はドクターが解説されていて、非常にわかりやすいです。