心理カウンセラーの種

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森田療法とは|囚われた状態を切り抜ける心理療法

 2016年12月16日  

森田療法は、世界中で使われている数少ない日本発祥の心理療法です。1919年に精神科医の森田正馬によって創始され、不安障害(神経症)の克服に大きな成果を上げています。

不安障害以外にも、気分障害(うつ)、パニック障害(不安神経症)、強迫神経症(対人・視線・赤面・不潔・高所・閉所・外出)などの克服にも使われています。

森田療法の考え方は精神疾患を持った人だけに効果的な訳ではなく、日常生活を問題なく過ごせている人が、ストレスを軽くする、緊張や不安とうまく付き合うのにもとても効果的です。

私自身以前人前で話すトレーニングをしていた時に過呼吸になった事がありますが、森田療法の考え方がとても役立ちました。この記事では、森田療法の基本的な考え方と、役立て方を紹介します。

悪循環(囚われ)を見つける

例えば手がブルブル震えるほど緊張感が強くなる、人前で話すと顔が赤くなり、赤面恐怖症になるほど症状が進むのには理由があります。どんな理由かというと、緊張している自分自身に強く意識が向き、その状態の自分を受け入れられない(認められない)からこそです。

緊張で手が震えだすと、当然それに注意が強く向きます。しかし、それに注意を向けて「なんとかしなきゃ」と思えば思うほど緊張のドキドキ感にも強く意識がいき、結果としてそれがますます大きくなります。

パニック障害はこの典型です。実際に急に胸がドキドキしだすと猛烈に焦ります。私自身、過呼吸になる直前に手足がしびれてきて、少しづつ呼吸が早くなっていましたが、いつもと違い、おかしいからこそそれに意識が強く向き、ただ焦るだけでした。その時の心と身体の関係を図にすると、↓のような感じです。

自分自身の心と身体の囚われ

森田療法-囚われの図

森田療法では、こんな風に嫌な感情を取り除こう、排除しようとしてそれに意識を向けると、その気持がますます膨れ上がることを精神交互作用と呼んでいます。

これは自分自身に対してだけではなく、自分と他人に対しても当てはまります。例えば次のような感じです。

  1. 職場で上司にきつく注意され、その上司に対してビクビクしてしまう
  2. 次はいつ注意されるかと不安になり、その上司にさらに意識が強く向く
  3. 仕事中常に上司が気になり、ビクビクして緊張感が強く、目の前の仕事が手に付かない

対人関係での囚われ

対人関係での囚われの図

この場合は、上司に強く注意が向き、その上司を受け入れられない(認められれない)状態のため、悩みになっています。

森田療法では、この負のスパイラルをどう切り抜けるかを次に紹介します。

森田療法で囚われを切り抜ける方法5つ

1 囚われの原因を掴む

囚われるのには理由があります。それは完璧主義傾向(向上心)が強いからこそです。

例えば、「物事を完璧にしなければならない」という思いが強ければ、必然的に完璧でないところに目がつきます(例:緊張で声が震える)。

他にも、「不安があってはいけない」「物事を完全にしないといけない」という思いが強いと、「少しの不安」や、「完全でないところ」が目について気になります。気にすれば気にするほど、上の図のようにその部分がクローズアップされるという悪循環に陥ります。

囚われの原因となっている「~しないといけない」「~すべき」という価値感に気付けると、それだけで自分自身が客観的に見えてきます。そうなると視点や行動を変える余裕も生まれてきますので、そのための具体的な方法を解説します。

2 悩み、不安、恐怖をあるがまま受け入れる

森田正馬は、死の恐怖を取り除こうとあらゆる努力をされていますが、結果としてそれを取り除くのは、不可能だという結論に至っています。

森田正馬は、

人であれば恐怖や不安を感じたり、悩むのは当然のことなので、それを排除するのではなくあるがまま受け入れていくと、その気持は決して長続きせず変わっていく

と言っています。

私自身過呼吸になった時そこまで症状が進んだのは、私自身の中にある「自分を変える怖さ・人前で話す怖さ」を受け入れず、排除しようとしていた、怖さを感じている自分を認められなかったからこそだと思います。

不安や怖さだけでなく、マイナスの感情はそのまま感じていると苦しいですが、ずっとその状態は続きません。

最近はペットロスという言葉もありますが、以前私の愛犬が亡くなった直後は寂しさや悲しさがとても強かったです。ただ、日時が経過すればその気持ちも少しづつ薄れていきました。

森田さんはこれを感情の事実と呼んでいて、次のように定義しています。

  • 感情は自然で操作出来ないもの
  • 感情は時間と共に変化する

最近では「グリーフカウンセリング」「グリーフケア」という言葉がありますが、これは亡くなった人に対しての思いや気持ちをしっかりと語り合って出すためのものです。その時の気持ちを「あるがまま」受け入れて出すための格好の機会を作れます。

自分自身の中に湧いてきた感情を「あるがまま受け入れる」だけで悩みがクリアになることもありますが、さらに次の方法を紹介します。

3 注意の方向と、行動を変える

これは悩みや不安、落ち込み等に注意が向きだしたら、その気持ちを受け入れた上で、その気持ちに意識を向けるのではなく、他の事に意識を向けて取り組んでいきます。

私の場合は、「怖さ」や「手足のしびれ・早い呼吸」が出てきたら、それに意識を向けるのではなく、話を聞いてくれている人の顔をしっかりと見て、その人の表情に意識を向けていく事で過呼吸の症状も消えていきました。

うつで落ち込みが出てきた時は、落ち込む気持ちを受け入れながら、心が落ち着く事をしたり、目の前の仕事や本来すべき事に意識を向けていきます。

以前お会いしたクライアントの方に、「職場での緊張感が強くて疲れやすい」という悩みを持った方がおられました。店舗での接客業の方です。

詳しくお話をお伺いすると、よく注意してくる上司がいて、その上司が自分の真後ろにいつもいるので、仕事をしながらいつ注意されるかといつもビクビクしていると。

つまり仕事をしながらも、この方の意識はその仕事に向かっているのではなく、むしろ後ろにいる上司にいつ怒られるか?という事に強く向いているわけです。

仕事中のご自身の意識を、上司に向けるのではなく、本来すべき目の前の仕事に意識を向けていくようにお伝えすると、仕事中の緊張感も抜けて楽に働けるようになっています。

4 開き直って必要な事に踏み出す

特に「やったことがない事」に取り組む前は、強く不安になります。前の日の夜は落ち着かず、眠れなくなります。

私自身カウンセリング講座をする機会がありますが、様々なカリキュラムを担当しています。特に初めてのカリキュラムは、いくら練習していても前の日になると不安で、「他の人が代わってくれないかな」という思いが強くなります。

日本人で初めてボクシング世界ミドル級王者になった竹原慎二さんは、ブログで「ボクシングの大事な試合の前は、自分か相手が交通事故で中止にならないかなと思った」と告白されています。

こういった事を克服するには、もう実際にやってみるしかありません。開き直って必要な事に踏み出す、直接経験してみる、体験する事を森田療法では重要視しています。

理屈でわかるよりも、体験できさえすれば治り、治りさえすれば理論は容易にわかるようになるから、体験を先にする事が得策。現実を経験することで、現実から学ぶことが最良の悩みの解決である。森田正馬(1936~1975)

5 悩みの表裏、あるがままを見る

森田さんは、死への恐怖を取り除こうとしていた時、「恐怖と欲望は表裏一体で、欲望なくして恐怖はない」と言っています。

「死にたくない」と感じるのは、「生きたい」からこそ。悩みの表面だけでなく、その気持ちが生まれた裏面も見てみることで気持ちは大きく変わります。

例えば、仕事をしていて不眠を恐れるのは、不眠で仕事の能率が落ちるのが嫌だからこそです。

緊張が嫌なのは、恥ずかしいのが困るのではなく自分のパフォーマンスを発揮したいからこそ。

妬みや羨ましい気持ちが出てくるのは、向上したい気持ちがあるからこそです。

パニック障害やうつ、不安障害になりやすい神経質な人は、自分の感覚に繊細で、自分を批判的に見るのは向上心が強いからこそです。

まとめ

森田療法は別名「あるがまま療法」と言われています。不安や焦りや苦しさを「あるがまま」感じるのは当然苦しいですが、感じさえすればその気持ちは長続きしません。心理カウンセラーはそのサポート役でもあります。

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