完璧主義にはメリットもありますが、生きにくさも強いです。
というのも、何事も常に完璧にできれば悩みにはなりませんが、完璧でない自分や他人にダメ出しする(否定する)機会がどうしても多くなるためです。
また、0か100かの思考パターンになり、グレーな状態(迷う、戸惑う、不安になる)になると、その自分を許容できないため、苦しさが増します。
怖さや不安、緊張感などのマイナスの感情を受け止めるのが苦手で、これらを無意識に完璧に取り除こうとする思いが働き、その結果として各種強迫神経症にもなりやすいです。
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この記事では、完璧主義の原因は幼少期の理由と、やめる方法を解説します。
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完璧主義の原因
完璧主義とは価値観
完璧主義になる要因を知るために大切な事として、完璧主義はその人の価値観(完璧でなければならない)であり、生まれ持った性質ではないという事です。
というのも、「完璧でなければならない」という思いは、自分自身の価値観です。価値観は育ってくる過程で身に付くものであり、生まれつきのものではありません。
性格が明るい、細かい所に気が付きやすい等の人の性質は生まれつきのものですが、人の価値観は関わる人や環境によって形成されます。
生まれ持った性質は変えられないものですが、価値観は変えられます。つまり完璧主義で生き苦しさがある場合、それは生まれつきの性質ではなく、価値観がネックとなっているため、変えられるという事です。
次にこの価値観が形成される要因を解説します。
価値観のベースは幼少期に築かれる
TA交流分析を創始したアメリカの心理学者、エリック・バーンによると
人の価値観の基盤は、7歳位までに築かれる
とされています。人は生きるために必要な様々な価値観を身に付けますが、そのベースは幼少期です。幼少期に
- 親の価値観を引き継ぐ(マネをする)
- その環境で必要性があって身に付く
のどちらかで子供ながらに生きる術を習得します。
完璧主義の親に似るケース
親と似たくない部分であっても、どうしても子供は親真似をしてしまいます。
これはある意味仕方の無いことだと思います。嫌な部分は似ないようにしようと意識しますが、それによって嫌な部分が何度も思い浮かび、結果としてその行動をしてしまうことは多いです。
親が完璧主義だった場合、その価値観を引き継ぐ(親に似る)ケースはシンプルです。
幼少期に必要性があって完璧主義を身に付けるケース
- 親のしつけが非常に厳しかった
- 親から褒められることが非常に少なかった
- 他の兄弟と比べて愛され方が違った
などの場合、親に愛される・褒められるために、
という思いが無意識に出てきます。
幼少期は親がいないとシンプルに生きていけないため、子供は親に愛される生き方を無意識に習得します。
例えば、自分よりも優秀な姉や兄、弟や妹がいた場合、どうしても比較されることが多いです。
「お兄ちゃんは簡単に出来たのにあなたは・・。」等と言われ続けると、
今のままの自分じゃダメなんだ。もっと頑張らないと、兄のように完璧でないと愛されないんだ。
という思いが無意識のうちに根付いていきます。
また、兄弟と比較されなくとも、親から褒められたり認められた経験が無いと、同じように「今のままの自分ではダメなんだ。」と感じざるを得ません。
特に日本人は謙遜を大事にして褒める傾向が弱いので、親から「よく頑張ったね。」「よくやったね。」と言われた事が無い人も多いです。(私自身もそうでした)
生まれ育ってきた環境の影響はとても強いですが、価値観は大人になってからでも変えられます。完璧主義をやめる具体的な方法を解説します。
完璧主義をやめる方法7つ
完璧主義の方は、どうしても完璧にやめたい気持ちが強いと思いますが、今まで無意識に続けてきた生き方のため、急にはなかなか変えにくいです。
完璧主義をやめるというよりは、緩める方向性で次のポイントを意識してみて下さい。
- 悩みのネックが完璧主義であることに気付く
- 完璧主義になった原因を掴む
- 本来の目的を意識する
- ゼロか100かを緩める
- どっちつかずの自分を受け入れる
- 出来ている、出来るようになった所に意識を向ける
- とりあえず気が向く事、楽しいと思える事をやってみる
詳細を解説します。
1 悩みのネックが完璧主義であることに気付く
ここは非常に大きな一歩で、完璧主義が自覚できているか、そうでないかは大違いです。
例えばHSP(非常に繊細な人)の方は、どうしても不安感や恐怖感を感じやすいですが、ここに完璧主義が加わると、完璧にそれらを取り除きたい思いが働き、精神交互作用で逆に不安感や恐怖感が頭から離れなくなることがあります。
完璧主義を自覚できていると、自分を客観視しやすくなり、囚われや悩みから抜ける大きな一歩になります。
2 完璧主義になった原因を掴む
これが大切な理由は、完璧主義の方に「それをやめて下さい」といっても、頭では理解できるけれど止められない状態になるためです。
完璧主義になる原因はこのページ上部で解説していますが、ここが理解できると今の自分自身に納得がいき、完璧主義の自分を許容しやすくなります。
つまり、あぁこういう経緯で自分は完璧主義になっているんだな、当時はそうせざるを得なかったんだなと自己理解が深まると、完璧主義の自分を許せる感覚が増します。
完璧主義の自分はダメだ!という状態と、それを受け入れられている状態では心のダメージは大違いです。
気持ちに余裕が出来てくると、改善するための行動に手を付けやすくなります。
3 本来の目的を意識する
完璧主義の方は、無意識に完璧にやることを最優先しやすいです。
自己肯定感が低い原因7つの記事で次のようなコメントを頂きました。
完璧を求めても、完璧な努力は大体いつもできないため、結果完璧にできなかったからダメだという結論に達してしまいます。
仕事での事だと思いますが、完璧にできなかったからダメだという言葉は、とにかく完璧にやる事が最終目標だからこそ出て来る言葉だと思うんですね。
決して悪い事ではないと思いますが、しんどいですよね。仕事であればその仕事を依頼してくれた人がいるのではないかと思います。
完璧にやる事よりも、その方がより満足・納得してもらえる仕事をする方(本来の目的)に意識を向けると、「完璧にできなかったからダメだ」という思いは弱まります。
特に仕事であれば相手のニーズに応えることが求められます。3日かけて100点の仕事をするのではなく、1日で80点の仕事が求められているのであれば、自分の要望(完璧にしたい)よりも、相手の要望(80点で早く欲しい)を優先させる事に意識を向けます。
4 ゼロか100かを緩める
完璧主義だと、どうしてもゼロか100かの思考になります。
うまくやれなくても良いのでとりあえずやってみようとはならず、行動力が落ちるだけでなく
という状態になります。例えばダイエット中に夜中少しだけチョコを食べると、それですべてがダメになったような感覚になり、どか食いしてしまうような状態です。
↓は自己肯定感が低い原因8つの記事で頂いたコメントです。
1点でも、「自分で頑張り切れなかった、もっとこうすればよかったかもしれない」という点を見つけてしまうと、自分のしたその仕事を、すべて意味のないものと感じてしまいます。
完璧主義が強ければ強いほど、「100でなければ意味が無い、99ではダメだ」という思考パターンになります。
仕事の難易度が上がるほど100に出来ない事も多いと思いますし、100に出来なかった時はモチベーションも落ちます。
ここを変えたいのであれば、0か100以外の自分も受け入れていくしかありません。
上手くやれない、100でない自分を受け入れるのが辛い時もあると思います。ただ、それがその時にやれた結果だと思うんですね。
テストで100点を取り続けられる人は皆無ですし、100出来なくても全力で取り組んだのであれば、その体験は次に活きてきます
0か100以外の自分を受け入れるという事は、やるかやらないか、どっちつかずのグレーな自分を受け入れていく事とも繋がります。
5 どっちつかずの自分を受け入れる
完璧主義だと、迷ったり戸惑ったりする自分、意志が確定しない自分が許せません。
↓は自己肯定感に関する記事に頂いたコメントです。
私も子供が欲しいという気持ちになったり、私なんかの子供に生まれてきたら子供がかわいそうだという気持ちになったり。いつもふわふわと、意志の確定しない自分が嫌で仕方がありません。
子供が欲しいという気持ちと、それに対する抵抗感があると、どうしても気持ちが揺れると思います。
特に大事な事であればあるほど決めづらいです。決めきれなくて戸惑う時もあると思いますし、意志が確定しない時もあるのが自然だと思います。
今は決めれないというのは、意志は確定してませんが、その時点での1つの答えでもあります。
1ヶ月後に決めるでも、3ヶ月後に決めるでも良いと思います。どっちつかずの状態も特有のしんどさがあるので、時間が解決してくれる事もあります。
6 出来ている、出来るようになった所に意識を向ける
完璧主義の方は、人一倍自分の出来ていないところに目がいきがちです。
というのも、人はどうしても上手くいっている所よりも、問題が有る部分に目がいきがちなんですね。例えば、↓のAとBの図をパッと見てどちらが気になりますでしょうか。
ほとんどの方は、丸が欠けている「B」が気になると思うんですね。問題がある方が気になります。
これは人の本能的な反応です。生き延びるためには欠けているところに意識を向けることが大事ですので、必然的にそちらの方が気になります。完璧主義の方はなおさらです。
ただ事実としては、欠けた丸と欠けていない丸があるだけです。欠けている方に強く意識が向くと、欠けていない丸(出来るようになった部分)まで見えなくなってしまいますので、そこもきっちり意識していきます。
「こうなりたい」「こうしたい」という何らかの目標がある方であれば、
目標当初の自分と比べて変わったところ、出来るようになった所
を意識すれば良いです。日々の小さな変化を大切にしていきます。
どんな小さな変化でもOKです。仕事を効率的にするために物を減らした、整理した等の変化も、出来たらノート(日記)につけていってみて下さい。自分は前進していると感じる事が出来るようになります。
これはプロゲーマーの梅原氏も実践している方法で、私もやってみましたが1日1日にハリが出るのでお勧めです。
参考:1日ひとつだけ、強くなる。
ここが変わると、自分だけではなくて周りの人に対してもやさしくなれます。職場の部下の人やお子さんに対して、「まだここまでしかやれていない」と感じて厳しく接するよりも、「始めに比べてここが出来るようになった」と捉えて接する事ができるようになります。ご自身のイライラも激減します。
ただ、完璧主義の方の場合、何をどうしたいのかが、自分でも分からないというケースも多いです。そんな時は次を意識してみて下さい。
7 とりあえず気が向く事、楽しいと思える事をやってみる
完璧主義だと必然的に行動が鈍ります。やるならきっちりしないといけない訳ですから。ただ、やってみて初めてわかる・感じられる事も多いです。
実際にやってみて、もっとやりたいと感じられたり、向き不向きも実感できます。やってみてつまらなければ止めれば良いだけです。
三日坊主という言葉もあるくらい、続けることが美徳とされる風潮はありますが、やってみてつまらない事がわかれば、それは1つの発見だと思います。
何をどうしたいのかが、自分でも分からない場合は、自分自身が楽しいと感じられる事、その時に気が向くことをやってみるのが良いです。読書でもゲームでも旅行でも何でも良いです。休みたい、何もしたくないと感じられるのであれば、是非休みましょう。
お勧めは心理学・カウンセリングを学んでみる事です。完璧主義が緩んで生きやすくなると、自分も楽ですし周りの人も楽です。この先の人生も大きく変わります。私自身も完璧主義が強かったですが、心理の学びで大きく楽になりました。
セルフケアカウンセラー通信講座にはそのエッセンスを凝縮してますので、興味のある方は是非ご受講下さい。
まとめ|完璧主義は強みになる
完璧主義は今までずっと続けてきた生き方でもあるため、急には変えにくいです。ただ、なりたい方向に少しづつシフトしていく事は必ず出来ます。
完璧に治さないとダメなんだ!意味がないんだ!という思いが湧いてくるかもしれませんが、完璧でなければならないから、完璧にした方が良いくらいに少しづつ緩めてみるのがお勧めです。
世の中にはこだわりの強さが求められる、大切にされる仕事や場所も多いです。完璧主義に囚われるのではなく、本来の目的や相手の要望も大切にし、グレーな状態も許容していけば完璧主義が強みになります。