認知行動療法とは、物事の捉え方と行動を変えていくことで、辛い・苦しい気持ちを軽くしていくことができる心理療法です。著者自身も、以前過呼吸になった事がありますが、認知行動療法でクリアできました。
他の心理療法に比べ、効果が現れるまでの期間が短く済む事が多いため、近年人気の高い心理療法です。カウンセリングスクールの中にも、講座の中に認知行動療法を組み込んでいるところは多いです。
この記事では、認知行動療法とはどんなものなのか、その実施方法や特徴を著者自身のケースを交えながら解説します。
認知行動療法とは
「認知」とは、物事の捉え方の事になります。同じ出来事があっても人によって感じ方・捉え方は様々です。
例えば「人前に出て話すと緊張して手足が震える」という出来事があった場合、次のような捉え方をする人がいます。
うわぁぁ、手足がブルブル震えちゃってるよ。聞いてる人からどう思われるだろう?なんとかしなきゃ。。。
緊張する!なんで手足が震えるんだよ!まずこの震えを止めないとマズイ!!緊張しないようにしなきゃ失敗するぞ。。。
プルプル震えてるな。まぁ人前に出て話すの慣れてないし、緊張するのは当然。緊張が伝わると良くないから、リラックス、リラックス。息を深くして身体も少し動かしてほぐそう。
どの捉え方が辛い気持ちが強いかというと、AさんやBさんの捉え方だと「緊張している自分自身を否定している」ので苦しいです。(※実はAさんBさん共、著者自身の昔の捉え方です。以下私の体験を踏まえながら紹介します。)
認知行動療法は、こういった捉え方(認知)のクセを心理カウンセラーと会話する事で発見し、別の楽になる・物事がうまく進む考え方にシフトしていくことを目標としています。
認知行動療法というくらいですので、実際に行動しながら改善に取り組んでいく事が多いです。
認知行動療法の実施方法
1 辛さを生み出している「認知」と「感情」の明確化
著者の例であれば、まずは「緊張はダメ!緊張しないようにしないと!」という捉え方(認知)で、人前で手足が震えだした時にどんな気持ちなのか?その気持ちのMAXを100としたら、どのくらいの強さなのか?を明確にします。
著者の場合は、「人前で話すのが怖い:95」「あせる:90」でした。
実は、始めは「怖いと感じている事に気付いてさえいない」状態でした。ただ、人前で話す時に手足が痺れて呼吸が早くなるという過呼吸一歩手前の症状が出て、なんなんだこれは・・・と思っていただけなんですね。
その時にカウンセラーから、「どんな気持ちですか?」と聞かれました。改めて自分の気持ちをじっくり振り返ってみると・・・出てきた気持ちは「怖さ」。
「怖いです」と言うと、カウンセラーからは「怖くていいですよ」という正直予想外の言葉をもらいました。さらに「どんな事が怖いですか?」と突っ込まれ、また改めて振り返ってみると出てきたのは「自分を変えるのが怖い、人に影響を与えられるようになるのが怖い」という事。
実はこの「怖いと思ってるんだ」という事がハッキリし、カウンセラーから「怖くていいですよ」と言われただけでかなり楽になりました。手足がプルプル震えて呼吸が早いときは、湧いてきている怖さを無意識のうちに打ち消そうとしていて、怖いと思っているとさえわからず、自分を客観視できてませんでした。
無意識のうちに「怖さを感じてはいけない」と思い込んでたんですね。
これは、著者がプライドが高かったからだと思います。人前で話すくらいで自分が怖さを感じている訳がないという「うぬぼれ」と、「自分の弱さを認めたくない気持ち」が無意識のうちにありました。
「辛さを生み出している認知」については、ケースによって、カウンセラーがクライアントにそう思う根拠を聞いたり、そう思うのが本当に事実かどうか確認することもあります。
2 生きやすい認知へのシフト
カウンセラーから、この捉え方が辛さを生み出しているので、こっちの楽な考え方に変えてみてはどうか?と提案したり、他に楽な捉え方はないか、クライアントと会話して一緒に探す事もあります。
怖さがあったらマズイ。緊張しないようにしよう!
↓ シフトさせます
怖くてもOK。緊張して当然。緊張をほぐすためにリラックスして呼吸を深くして、背筋を伸ばし聞いている人の顔をしっかりと見て、自分の意識を緊張している自分から聞いてくれている人に向けていこう。
3 実際にやってみる
もし「緊張」がテーマであれば、手足が震える現場を100として、出来るだけ不安感の低い場面から上記の捉え方と行動を実際にやってみます。
不安感の段階は、ケースによって様々で、不安度10から20、30、40~と細かく設定して少しづつ取り組むケースもあります。こんな風に、その人にとって不安の低い場面から、高い場面までの表を「不安階層表」と呼んでいます。
4 実際にやってみた後のその時の「感情」の明確化
捉え方(認知)と行動を変えてみて、その時の気持ち・感情を確認します。始め(人前で話すのが怖い:95)から、その気持が具体的にどれくらい変わったのかを見ます。
辛い気持ちが楽になっているのであれば、見事クリアです。以上が認知行動療法の基本の流れです。
認知行動療法がよく使われる症状
不安や認知が原因で問題が現れるパニック障害>、強迫性障害を始め、気分障害、うつなど、様々な症状に効果があります。もちろん、労働者のストレス管理にも活用できますし、病気の一歩手前のつらい気持ちを変えるのにも効果的です。
認知行動療法の特徴3つ
他の心理療法と比べての特徴を紹介します。
心理やトラウマを追求しない
問題が起きている具体的な状況はしっかりと聞きますが、行動療法と同じく、幼少期の生育歴を深掘りすることはありません。
認知行動療法では、過去の問題よりも現在に焦点を当てます。
問題を明確にし、カウンセラーが積極的に発言、提案する
クライアントが話したい事を自由に話すと問題が長期化する事もあるため、認知行動療法では、カウンセラーが問題(課題)を明確にし、その解決のために何が出来るか会話したり、積極的に情報提供する事が多いです。
著者のケースであれば、「聞いている人の顔をしっかりと見て、背筋を伸ばして呼吸を深くする」というのは、カウンセラー側の指示です。
ホームワークを重視
著者の場合は、1回のカウンセリングでOKでしたが、これはカウンセリングを習っていたからであって、認知行動療法では通常10~20回程度のカウンセリングが行われることが多いです。認知行動療法では、基本的にカウンセリングとカウンセリングの間でホームワークが出され、それに取り組んでみてどうだったかを確認していきます。
まとめ
認知行動療法は、物事の捉え方と行動を変えていくことで気持ちを軽くし、「生きやすさ」を手に入れられます。
将来カウンセラーとして活動したいと考えておられる方は、要チェックの心理療法です。