用語集

カウンセリングにおける生育歴とは

生育歴とは一言でお伝えすると、生まれてからあなた自身が今日まで育ってきた歴史の事です。

どんな環境で育ち、どんな人に出会ってきたか、どんな人に育てられたのかで人の価値観は大きく変わります。

特に心理カウンセリングでは、7歳くらいまでの生育歴を重要視しています。というのも、TA交流分析を創始したアメリカの心理学者、エリック・バーンによると

人の価値観の基盤は、7歳位までに築かれる

とされているからです。(あくまで基盤です。もちろんその後も変わります。)

親の良い所であろうが、悪い所であろうが、自然と子供は親に似てきます。親が子に対してどんな対応・かかわりをしていたか、兄弟がいたかどうか等で人の価値観は大きく変わります。

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成育歴との違い

成育歴とは、身体の成長(発育)の歴史のことです。

成育とは、文字通り育ち大きくなることで、病院の検診時によく使われる言葉です。何歳くらいでハイハイし始めたか、歩き始めたか等、定期検診と合わせてお子さんの体の成長・発育の様子を見る時に使われるケースが多いです。

生育歴で具体的に聞く事

生育歴は、その人が生まれてから今日まで育った歴史の事で、心理学・カウンセリングで使うことが多いです。特に幼少期の家庭環境がその人の心に与える影響が強いため、カウンセリングで重視されます。

  • 幼少期の親との関係はどうだったのか?(虐待の有無・会話や教育の様子など)
  • 両親同士の関係性はどうだったのか?
  • 兄弟がいた場合、関係性はどうだったか?

上記の生育歴を聞くと、その方の問題の根となる価値観を持つようになった理由が浮き上がる事例が多いです。

例えば父親から母親へのDVが日常的な場合、子供はその環境が苦しくてもそこから逃げることが出来ません。必然的に自分を守るために感覚を止めて感じないようにします。

一時的にその方法で乗り越えることはできますが、その環境が変わってからも感じないようにする心のクセがついたままだとどんどんストレスが溜まり、過呼吸などのひずみとして現れるケースがあります。

生育歴を聞く意味と2つの効果

1 心の問題解決に繋がる

その人の生育歴を的確に理解することは、カウンセリングで比較的多い症状の原因が掴め、問題解決の糸口になります。

生育歴が、チック症(首振りや過剰なまばたきが意識せずとも起こる)や、夜尿症、摂食障害や恋愛の悩み等の問題の根っこになっていることが多いです。

なぜかというと、子供にとって食べ物や愛情を与えてくれる存在は必要不可欠です。その人がいないと純粋に生きていけないので、その人に愛されるために、必要な考え方・価値観を無意識の内に身に付けます

例えばはしゃいだり、泣いたり、笑ったり、素直な感情を表現をした時にいつも怒られていると、子供にとっては「表現しない事が愛されるんだ」と感じられます。こうなるといじめられた時にも「嫌」と言えない(表現出来ない)のでいじめの対象になりやすいです。

その人の生育歴を振り返り、幼い時に満たされなかった気持ちをカウンセリングでクリアにしたり、なぜ自分がそれで悩むのか?という事がわかるだけで問題解決に繋がる事は多いです。※脚本分析のページで、マリリンモンローの生育歴と、それが人生にどのような影響を与えたかを紹介しています。

2 しっかり理解してもらえたと感じ、強い安心感が持てる

これは筆者のケースですが、以前教育分析(カウンセラーがスキルアップのために受けるカウンセリング)を受けた時に、生育歴をきっちりと聴かれました。

どんな風に聴かれたのかというと単純明快で、

物心ついた年齢から今の年齢まで、それぞれの歳ごとに印象に残っている事を話して下さい。

と言われたんですね。私はその時にひっかかっている事やカウンセラーに話したくないと感じている事はなかったのですが、話せる事だけでいいですよという空気感が漂っていました。

当時30代半ばだったので1回60分のカウンセリングでは伝えきれず、2回か3回で伝えきったと思います。幼稚園に通いだした時のことから、学生時代のこと、社会人になってから働き出したこと。カウンセリングを知ったきっかけやカウンセリングトレーニング中に起こった事など、思いつく限りすべて口頭で伝えました。

カウンセラーの方はその間、私が話した特定の出来事に対して質問をする事はほとんどなかったんですね。メモを取りながら聴かれていましたが、覚えきれないものだと思うので、メモを取られることからくる話しにくさは無く、逆にきっちりと理解しようとしてくれているんだなと信頼感が持てました。

生育歴を伝えきった後

自分のことをしっかりと理解してもらえたという深い安心感があります。

生まれてからすべての年齢で印象に残っている事を誰かに伝えるということは、滅多にない事だと思います。親や恋人に対しても基本しないと思うんですね。

アメリカの心理学者・マズローの言葉によると、人は誰しも承認欲求(自分の事をわかって欲しい・認めてもらいたい欲求)を持っているとありますが、これがしっかりと満たされました。

「自分自身の事をしっかりわかってくれている、理解してくれている人」が1人でもいると、心の安定感がとても強くなると感じます。

カウンセラーに「生育歴を書いてきて」と言われた場合の書き方

上記のように、物心ついた年から年ごとに印象に残っている事や、印象に残っている人との関わりを書くのが基本ですが、そのカウンセラーに具体的にどんな事を書けばよいか聴くのが良いです。

ただ、書くだけでとても大きな労力ですし、そんなおおざっぱな指示を出すカウンセラーは避けた方が良いです。カウンセリングの勉強をしていない限り、生育歴と言われてもなんのことかわからないのが普通ですし、指示がアバウトだとこちらへの理解や、カウンセリングのゴールもアバウトになりがちです。

特にカウンセリングを利用している方は、思い返すのが辛い過去もあると思います。「次回までに生育歴を書いてきて」という指示は、「辛い過去を1人で振り返ってきて」という指示とある意味イコールです。カウンセラーと共に振り返ると、辛い過去も思い起こしやすいですが、カウンセリングの課題としては不適切な指示です。早めにカウンセラーを変えるのをお勧めします。

まとめ

生育歴とは、あなた自身が生まれてから今日まで育ってきた歴史の事です。

どんな環境で、どんな人と関わって過ごしたきたのかを振り返って話してもらうことで、なぜその出来事がその人にとって悩みとなるのかが見えてきたり、相手への深い理解に繋がります。

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  • この記事を書いた人

井上 隆裕

2004年よりプロの心理カウンセラーとして活動。2013年に独立開業。ジョイカウンセリングスクール代表。 運営者情報

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