受容とは、相手の存在そのものを受け止める事です。元は来談者中心療法(アメリカの心理学者、カール・ロジャーズが創始)の中の1つのスキルで、心理カウンセラーが使う聴き方・関わり方です。
受容は決して相手を否定したり評価しない考え方なので、相手の方に話しやすさを感じてもらえます。
受容が形になって現れているカウンセラーは、安心出来る穏やかな笑顔で、その人の側にいるだけで癒される感じがします。
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受容の方法と効果
受容の姿勢でかかわる時は、とにかく受け止めます。相手が話した事について
- 自分の意見は伝えない
- 良い悪い、評価はしない
- アドバイスもしない
関わりです。具体例を交えて解説します。
具体例
例えばあなたが友人から、
と言われたら、受容的な返しは
です。こう返すと、自分の気持ちを受け止めてくれた、わかってもらえたと感じられます。
上記の「腹が立つよね」は、相手の気持ちを汲み取った言葉で、傾聴技法では共感といわれています。受容の性質から、共感とセットで使うことが非常に多いです。
関連:共感の使い方 |相手の気持ちを汲む方法
受容的でない関わりとして、
といった返しは、理屈としてはもっともですが「自分の怒りを受け止めてもらえた」実感は持てません。受容的にかかわる時は、怒りであろうが憎しみであろうが、苦しみであろうが相手が感じていることをそのまま受け止めてかかわります。
すると、話し手にとっては、怒りを感じている自分でもいいんだな、悩んでいてもいいんだなと今の自分を肯定されているように感じられるので、自己肯定感が高まります。また、気持ちが楽になったり本音(素の自分)を出しやすくなる効果があります。
上記のような返し方だけでなく、受け止めてくれそうだなと相手に感じてもらうための関わり方・聴き方は受容的な態度と言われています。
受容的な態度について
心理カウンセラーは相談者に受容を感じてもらうために、次のような関わりを心がけています。
- 相手が安心できる笑顔
- 姿勢(身体を相手に向ける)
- 視線を合わせる
- 相手が安心出来る声のトーンで関わる
- 安心出来る目の表情で関わる
上記の関わり方で、何を話しても大丈夫ですよというメッセージを態度で現していきます。
実際に受容の姿勢で関わっている動画や写真を受容的な態度とはのページで詳しく解説しています。
受容されていないと感じられる関わり
ありがちなケースとして、話し手の方が自分自身を責めている時に
と伝えると、受容されているとは感じられません。言っている事は正しいのですが、自分を責めている状態のその人自身を否定している事になるためです。
「そういった状態だと苦しいですよね。」だと責めているその人自身の気持ちを汲んでいるかかわりですので、受け止めてもらっている(受容されている)と感じられ、楽になれます。
条件付きの受容
例えば、テストで90点以上とれたらOK、この仕事が出来たらOKなど、「○○が出来たらOK」というのが条件付きの受容です。出来ない時は、当然受容されていないと感じられるので、カウンセリングでは使いません。
ちなみに言葉でいうと、「受け入れる」は条件付きで使うことが多いです。(例:一定基準を満たしている人を受け入れる)それに対して「受け止める」という言葉は無条件として使うことがほとんどです。「一定基準を満たしている人を受け止める」なんて使わないですよね。
無条件の受容
一切条件なしに受容する事です。カウンセリングでは基本的にこちらを使います。
基本的にというのは、例えば暴力行為などで荒れている学校に受容しかしないカウンセラーが行くと、余計荒れることがあります。これは、受容的に関わる事で、「暴力行為をしてもいいんだな」と感じられるためです。そんな時は、ダメな行動はダメとキッチリ伝え、暴力行為に至ったその人の状況や気持ちは受容しながら関わります。
類似した言葉との違い
許容との違い
許容は本来は許せない事を大目にみることですが、受容には許す・許せないという誰かの価値観が基準となる観点はありません。
好きとの違い
好きには個人の観点が含まれますが、受容には個人の観点は含まれません。
そのため、クライアント(相談者)の事を好きであろうが、そうでなかろうが受容する事は可能です。
承認との違い
承認されるためには基本的に何らかの基準、条件がつきものです。受容は無条件で存在そのものを受け止めます。
承認はコーチングでも使われるスキルで、コーチングでは
- 存在承認(あなたがいると場が和む等)
- 行動承認(~してくれて助かった。有難う等)
- 結果承認(仕事でこれだけの利益・成果が出た等)
の3つがあります。
受容と存在承認の意味合いは近いですが、受容の場合はマイナスの感情(憎しみや悲しみ、怒り等)も受け止めます。
肯定との違い
肯定とは何かにOKを出せる事です。受容は受け止める事なので、OKを出せなくても大丈夫です。
自分が感じている様々な感情を受け止められるようになると、自己肯定感が高まるため、関連性はあります。
例えば自分の中の怒りや恨み抑え込むのではなく、受け止められる(受容できる)とその感情を適切に表現して浄化出来ることに繋がります。
また、自分の中の前向きな部分だけでなく、後ろ向きな部分や怠けたい自分、休みたい自分も受け止められる(受容できる)ようになると、自分自身が本来感じている事に対しての受け止め方が変わり、結果として自己肯定感が高まります。
自然や動物との関わりでも感じられる
動物を使うアニマルセラピーもあるくらい、動物は受容の力が強いです。特に犬やイルカ、馬等はセラピーに使われます。
筆者自身以前ウサギを飼っていました。ある時ある仕事をクビになってしまって、働いていた時よりも部屋にいる時間が圧倒的に増えた事があります。ウサギも部屋の中でケージに入れて飼っていたのですが、ウサギの私への態度は、クビになる前と後では一切変わりませんでした。そんなウサギの変わらないかかわりにとても癒やされたのを良く覚えています。
また、山や海等の自然の中にいると他では得られない心地よさがあります。これは自然の中にいると、細かい事などどうでもよくなり、ありのままの自分でいいと受容を実感出来るからです。
まとめ
受容はカウンセリングでは、必要不可欠です。受容がある事で、深い悩みや辛さを打ち明けられるようになり、誰しも持っている自分のことをわかって欲しい・認めて欲しいという承認欲求が満たされます。