緊張する理由は自分の身体を守るためで、非常事態に備える身体の反応です。
というのも、緊張すると呼吸が早くなったり、胸がドキドキしたり、身体が硬直したりします。身体にこういった反応が現れるのはとても自然なことで、
- 呼吸を早くすることで酸素を多く取り入れ、脳と身体を活性化させる
- 筋肉を固くさせることで普段よりも強い力を発揮させる
ためです。
つまり普段よりも良いパフォーマンスを発揮させるために自然に緊張しているのですが、緊張がこじれると手足がしびれたり、身体に異常をきたして本来の力を発揮できなくなることがあります。
この記事では緊張する理由と、緊張がこじれる心理学的な理由、かんたんにできる対応法を2つ解説します。
緊張する理由とは
緊張は人の自然な反応で、人の防衛本能でもあります。
というのも、緊張すると以下の様な特徴が体に現れます。
- 筋肉が硬くなる。
- 呼吸が早くなる。
- 血流が早くなる。
例えば大昔、人が狩りでイノシシなどの獲物を捕えるとき、筋肉がリラックスした柔らかいままだと、自分を守れません。戦うときのテンションと、ゆっくりとお茶を飲みながら本を読むときのテンションや筋肉の状態は、明らかに違います。
緊張して筋肉が硬くなるのは、自分自身の体を守るためです。大昔から引き継がれてきている大切な防衛本能です。
人前で話すときに緊張すると呼吸が早くなりますが、これも酸素を多く取り入れて頭の回転を上げ、力を発揮しようとする現れです。
人前で話すときに家でいるようなリラックスした態度では、聴いている人がどんな風に感じているかを掴むこともできませんし、話の内容を理解してもらえるように情熱を込めて話せないものです。
緊張して呼吸や動悸が早くなるのは、自律神経(オートマティックに体の調子を整えてくれる神経、汗をかくのも自律神経の働きの1つ)が働き、持てる力をフルに発揮しよう!という思いがあるからこそです。
そのため適度な緊張感は、その人が持っている力を十二分に引き出すためにとても大切なものです。緊張感があったほうがいい結果を残せることがあるのはこのためです。
しかし時に緊張がこじれて手足がしびれたり、本来の力を発揮できないどころか、身体に異常をきたすケースがあります。
緊張しすぎる心理状態
と緊張が逆にこじれてどんどん大きくなります。特に完璧主義傾向が強い方ほど緊張を完璧に取り除きたい気持ちが無意識に働き、こじれやすいです。
緊張したとき、
という意識が、キッチリやりたい思いが強い人ほど出てきます。そして緊張を取り除こうとすると、必然的に緊張している自分に意識が強く向かいます。
緊張に意識が強く向かうと、必然的に自分の意識の中に占める緊張の比重は大きくなります。
しかし、緊張を感じないようにしようとしても、緊張しているのはまぎれもない事実です。
自分が実際に感じていることや、感情を抑えこもうとすると、実は余計にそれがクローズアップされる、余計に湧き上がってくるという特徴があります。
緊張が高じて人前で文字を書くときに手が震えたり、お茶を出すのに手が震えたり、人前で話すときに顔が赤くなって話せなくなることがあるのはこのためです。
これは世界中のカウンセラーが使っている森田療法では、精神交互作用と呼ばれています。
詳細:森田療法とは|不安や恐怖に囚われた状態から抜け出す心理療法
緊張した時のドキドキや怖さ、不安感はとても嫌なものですが、緊張時の反応(胸のドキドキ、声や手足の震え)だけでなく、その時の感情を抑え込もうとするとこじれます。
緊張時の感情を抑え込むと緊張がこじれる
私自身、人前で話す講師トレーニングをしている時に緊張がこじれて手足がしびれ、呼吸が異様に早くなったことがあります。
その状態を何とかしたいと担当トレーナーに伝えると、
と15名ほどの参加者がいる教室の前に立たされました。そして
と聞かれました。すぐには答えられなかったため、自分の気持ちを振り返ってみて出た返答は
でした。さらにトレーナーと次のようなやりとりをしたんですね。
と言われ、手足のしびれは一気に引いていったんですね。
当時の私は、俺が人前で話すのに怖さを感じているわけがないと思い、怖さを無意識に抑え込もうとしていたんだと思います。
そのためそれが弊害となって身体に症状として現れていました。
緊張時の反応だけでなく、自分の自然な感情を抑え込もうとすると、緊張はこじれます。
怖さや不安感は自分を守ってくれる大切な感情でもありますので、無くすことはできません。それらを受け入れ、意識を本来の目的に向けていくと自然と感情は変化します。
緊張しすぎないようにする方法2つ
緊張しながらも、本来の自分自身の力を発揮するために必要なポイントを解説します。
1 緊張を受け入れる
緊張すると声や手足が震えたり、ドキドキが激しくなり、身体が普段の状況とは違う反応を示すため、それを取り除こうという意識が働きます。
しかし取り除こうとすると、上記の緊張反応に意識が強く向き、余計に緊張しやすいです。
つまり緊張したときに、マズイ!緊張している!と考えるのではなく、緊張していることを受け入れたほうが、その緊張が高まりません。
たまに人前で話しながら「いや~、今日はこんなに多くの人に来て頂いて今とても緊張しています。」と自分自身で緊張していることを言う人がいますが、緊張感を受け入れるためのとても良い方法です。私自身も講座のときにたまに使わせてもらっています。
緊張した自分を否定すると余計にしんどくなるため、緊張した自分を受け入れて本来すべき事に意識を向けていきます。
2 肯定形でイメージする
「緊張しないようにしよう」は、否定形です。否定形でイメージすると、必ずその否定形のイメージが頭に浮かんできます。
例えば、「ピンクの猫をイメージしないで下さい」と言われたら、いやがおうでもそれをイメージするはずです。同じように「緊張しないようにしよう!」と思うと、「緊張」というイメージが頭に浮かんできます。
緊張しすぎないようにするためには、肯定形でイメージします。
落ち着いて伝えよう、話そう、情熱を込めて伝えようという感じです。
緊張する場面で、「緊張しないようにしよう」と思って取り組むのと、「落ち着いて伝えよう」と思うのでは、脳の中で湧いてくる「緊張」の差は歴然です。
関連:絶対に緊張しない方法7つ|心理学でかんたんに緊張を克服
まとめ
緊張する理由は、普段よりも高いパフォーマンスや判断力を発揮するためです。
人の自然な反応のため、それを取り除こうとしたり抑え込もうとすると、逆に緊張に意識が強く向き、余計に大きくなります。(精神交互作用)
緊張時の反応だけでなく、緊張した時の感情(主に怖さや不安)もあるがまま受け入れることで緊張はこじれません。
緊張するのは人のとても大切な防衛本能です。
緊張感を受け入れ、肯定形でイメージしていくことで、緊張感と適切に付き合っていくことが出来ます。