カウンセリングの守秘義務が大切な理由と破らなければいけない時2つ

カウンセラーが負う守秘義務とは、相談事を受けた時、相談者の話した内容を他言しないことです。プロとして活動する時には守秘義務は厳守する必要があります。

もし相談者さんのご家族や、会社の上司などから「相談を受けた内容を教えて欲しい」と言われても、伝えてはいけません。

相談者さんの同意があれば伝えてもOKですが、相談者さんがカウンセラーに対してNOと言いにくい場合もありますので、配慮する必要があります。

守秘義務が大切な理由

守秘義務は相談者がカウンセラーに安心して悩みを打ち明けてもらうために、とても大切です。

カウンセリングに限らず、もしあなたがプライベートな悩みを親しい人に話して、それが知人みんなに知れ渡っていたらショックが大きいはずです。そんな人は信頼出来なくなってしまいます。

また、カウンセリングで聴いた内容を、相談者さんの許可なくホームページに記載したりすると、相談者さんからするとそんな所には行きたくなくなります。

とても大切な守秘義務ですが、時に法的な義務としてこれを破らなければいけない時があります。

守秘義務を法的に破らなければいけない時2つ

1 児童虐待を発見した場合

児童虐待を受けたと思われる児童(18歳に満たない者)を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

引用元:児童虐待の防止等に関する法律 第六条

滅多にない事だと思いますが、カウンセラーとして倫理的にも必ず知っておくべき事だと思います。米国でも児童虐待を報告することは、すべての州で義務付けられています。

児童相談所は地域毎に細かく区切られています。東京では11箇所もあるくらい。各都道府県別の児童相談所一覧ページはこちらをご参照下さい。

2 相談者に自傷他害の恐れがある場合

守秘義務に関しては、裁判所が例外を設定しています。それは、裁判所がクライアントに自傷他害の恐れが有ることを判断する正当な根拠がある場合です。

引用元:心理援助の専門職になるために

裁判所の判断なので、普通の人には「その判断基準って何?」と感じるところだと思いますが、自傷・他害両方とも常識的な範囲で考えるのが妥当です。

例えば相談者が父親に激しい恨みを持っていて、息の根を止めたいくらいの気持ちがあったとします。そのための凶器や日時などをリアリティを持って話されていたとしたら危険度が高いです。警察等に通告すべき時といえます。

守秘義務を破らなかったために訴えられたタラソフ事件

実際に過去アメリカで、カウンセリング中にクライアントが「タラソフを銃で撃つ」と明確な殺意を口に出し、それを実行してしまった事件があります。(タラソフ事件)

カウンセラーはそれをタラソフ本人に伝えなかったとして、家族から訴えられたんですね。

こんな事例を聞くと、何かあって訴えられると大変だから、とにかく危険な事を話されたら通告すべきという思いが出てくると思います。

ただし、殺意に関する言葉が出ればとにかく通告すべきかというと、そうともいえません。恨みや憎しみは人であれば、場合によっては湧いてくる自然な感情です。カウンセリングでその思いをしっかりと出すサポートをし、浄化する事に重点を置くのがカウンセラーの本来の役割です。恨みや憎しみがカウンセリングで浄化できれば、それを実行したい気持ちは収まります。

カウンセリングでそれが出来ず、他害実行をリアリティを持って話されたのであれば、通告すべき時です。

スクールカウンセラーとしての守秘義務

文部科学省のページでは以下のように定義されています。

カウンセラーがその相談を受け、そのことは守秘される、しかしながら必要と認められることは、カウンセラーの責任において学校に報告されるという相談状況が作られることが望ましい。

生徒や先生、職員から相談を受けた場合、基本的に守秘義務はありますが、チームとして問題解決に取り組む場合、問題を共有したほうが良いケースもあります

共有事項は聞いた内容すべてを共有した方が良いのか、相談者のおおまかな状態のみ共有した方が良いかはケースバイケースです。

1番良いのは子供さんや保護者に「この話について大切な事なので学校側にも共有して良いですか?」と確認が取れることです。

カウンセラーの責任で共有される可能性はあるため、どうしても学校側に話した内容を伝えてほしくないのであれば、スクールカウンセラーではなく、他の民間のカウンセラーを活用すべきです。スクールカウンセラーは組織の中で活動してますので、その責任をはたすのが役割です。

いじめがある場合

スクールカウンセリングでいじめが発覚した場合、法的に守秘されません

いじめ防止対策推進法第23条で以下のように決められているためです。

学校の教職員、地方公共団体の職員その他の児童等からの相談に応じる者及び児童等の保護者は、児童等からいじめに係る相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、いじめを受けたと思われる児童等が在籍する学校への通報その他の適切な措置をとるものとする

その他の守秘義務の例外

上記以外では次のように定義されています。

  1. クライアントのケアに直接関わっている専門家同士で話し合う場合
  2. 法による定めがある場合
  3. 医療保険による支払いが行われる場合
  4. 相談者が裁判を起こした場合

引用 公認心理師現任者講習会テキスト 金剛出版 P24(参照2022-02-10)

1はスーパーバイズを受ける場合で、受ける側・アドバイスをする側の双方が守秘義務を負います。

2はレアケースですが、私自身過去裁判所から、ある相談者がカウンセリングを実際に受けたかどうかのみを確認する電話がかかってきたことがあります。

これはその相談者が裁判で、「自己改善のためにカウンセリングに行くようにします」と宣言していたためです。内容の詳細は聞かれませんでしたが、実際の裁判所からの電話が明確だったため、受けていると伝えた経験があります。

3はカウンセリングで保険適用される疾病名が決まっているため、氏名と疾病名が例外対象となる程度です。

4もレアケースですが、可能性としてはあり得ることです。私自身未然にこれをできるだけ防ぐために、良いカウンセリングをするのはもちろんですが、申込書に以下の項目を記載して同意の署名をして頂いてます。

カウンセリングを受けた後、相談者の状況に変化があったとしても、その変化をカウンセリングによるものと断定し、その責任を問うような行為を一切行いません。

相談者の秘密・会話の内容は守秘すべきものですが、守秘してはいけない時もあります。レアケースだと思いますが、特にカウンセラーとして独立を考えている方は、頭の片隅に置いておいたほうが良いです。

守秘義務を守らなかった場合の罰則

心理カウンセラーが守秘義務を守らなかった場合、公認心理師(国家資格)を所持している場合のみ法的に以下の罰則が適用されます。

第四十一条 公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。

第四十六条 第四十一条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

引用:厚生労働省 公認心理師法(参照2022-06-28)

心理カウンセラーが公認心理師資格を所持していない場合、上記の罰則は適用されません。ただし信頼を大きく落としてしまいます。特に独立開業カウンセラーの場合、ネット上に守秘義務が守られなかったという口コミが上がると、その後の仕事に大きく影響します。

相談者のためにも、カウンセラー自身のためにも守秘義務は守るべきです。


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心理資格取得を目指す女性
  • この記事を書いた人

井上 隆裕

心理カウンセラー、傾聴トレーナー、2004年からプロの心理カウンセラーとして活動し、2013年に独立開業。 詳細なプロフィール

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