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イエスバット|アドバイスを求めるのに聞かない人の心理と対策

相談を持ちかけ、アドバイスを求めるのにもかかわらず、こちらがアドバイスしてもそれを聞かない人がいます。

別のアドバイスをしても何らかの理由をつけてそれを受け入れません。

アドバイスした側としては、時間と労力は使うけれど、何の生産性も感じられないコミュニケーションです。アドバイスを求めるくせに、こちらのアドバイスを受け入れないので、腹も立ってきます。

この不快なコミュニケーションは心理学で確立されており、ゲーム分析の1つでイエスバット(はい、でも)と呼ばれています。

このコミュニケーションが心理学でゲームと呼ばれているのは、文字通りゲームのような性質があるためで、無意識にお互いがコミュニケーションで勝ち負けを意識してこじれるのが特徴です。

人であれば誰しも持っている欲求から生まれているため、非常に多くの人が無意識に仕掛けたり、仕掛けられたりします。

この記事では、アドバイスを求めるのに聞かない人の心理と対策(ゲーム分析のイエスバット)を解説します。

動画で知りたい方はこちら

はい、でも(イエスバット)のゲーム例

まずは具体例から紹介します。

例えば深夜に電話をかけてきて、「これについて困っている」という相談を持ちかけられます。しばらく聞いたあとに、「こうしてみたら」と提案しても、「そうだよね」と一旦は受け取りつつ、「でもそれは~だから難しい」という風に断ります。

  1. アドバイスをする
  2. 一旦はそれを受け取り、でも…と何らかの理由をつけて断る
  3. 別のアドバイスをする
  4. また一旦はそれを受け取るが、理由をつけて否定する

という形が延々とループします。次のようなコミュニケーションです。

気になる人に告白しようかどうか迷ってるんです。
まずは食事に誘ってみたら?
そうですよね。でもいい場所が見つからなくて。
あそこのパスタ屋は雰囲気いいよ。
そうですよね。でもパスタだとすぐに食べ終えてしまいそうで・・。
駅前の中華は結構美味いよ。
そうですよね。行ったことあります。でも胃が弱くて、油物が苦手なんです・・・

最終的に何の解決にもならないので、相談を受けた側がブチ切れて「勝手にしろよ!」と言って終わる場合も多いです。

相談を持ちかけられた側は非常にイラつくコミュニケーションですが、相談を持ちかけた側としては、実はある感覚が満たされています。

このゲームを仕掛けてくる心理

相談を持ちかけた側は、このコミュニケーションで次の感覚が満たされています。ただし決して悪気があるわけではなく、本人も無意識です。

  • 関わってもらえた(かまってもらえた)
  • 相手の時間を奪ってやった
  • 相手に無力感を味あわせてやった

本人には上記の自覚は無いため、無意識に何度も繰り返してしまいます。

このゲームを仕掛ける側の人は、幼い頃に自由にさせてもらえたり自分で選ぶ機会が少なく、親に従わざるを得なかった・親の言う通りにせざるを得なかった経験をしている人がほとんどです。そのため無意識のうちに

  • 自分より強い人に今まで抑えつけられたため、強い人に反発したい。
  • 立場が上の人の思い通りになってたまるか!

という思いが心に溜まっています。でもそれをストレートには言えないため、こういった歪んだ形で表現してきます。

相手のアドバイスには従わない事で、あなたの思い通りにはなりませんよという事を裏のメッセージとして示してきます。

対策と終わらせ方

この不毛なループにハマらない方法を2つ解説します。

1 アドバイスするのではなく、傾聴する

コミュニケーションの形を変えます。このパターンにハマったら、アドバイスするのでなくしっかりと聴きます

人はアドバイスが欲しいのではなく、「ただ聞いて欲しいだけ」という時も多いです。しっかりと聴き、つらさや苦しさ等の本音を出しても良いというメッセージを態度で示していきます。

というのも、イエスバットを仕掛ける人の心理として、相手に関わってもらうことで自己肯定感が保てる点があります。

親に自分の話をしっかりと聞いてもらえなかった・受け止めてもらえなかった、自分の弱音を素直に言えなかった経験をしている人も多いです。

相談を受ける側が、アドバイスをすぐにするのではなく、しっかりと共感しながら聞くことで、わかってもらえたという感覚や相手の自己肯定感が満たされていきます。

具体的な聞き方は、傾聴とは|意味と使い方の記事をご参考ください。

2 相手の意向を聞く、会話を一旦打ち切る

しっかりと話を聞いた上で相手がアドバイスを求め、「はい、でも」のパターンになってきたらアドバイスではなく

相手はどう思うか、相手の考えを聞く

パターンにチェンジしたり、一旦会話を止めて、

しばらく考えてみて。また10日後くらいに会話をしましょう。

という感じでコミュニケーションの形を変えます。

それだけでこちらのストレスは大きく変わります。

相談を持ちかけた側も本音を出せる関係になってくると自己肯定感が満たされ、親との関係では満たされなかった「本音を受け止めて欲しい」という思いも溶けていきます。

まとめ

アドバイスを求めるのに聞かない人は、相談をもちかける相手に実はあこがれている、あなたのようになりたいという思いがある事も多いです。

でも自分がそうなるためには努力が必要で、その努力は今の自分には難しい、そのあこがれの相手の思い通りにならない事で自分が保てる面もあります。

その他の本音として、

  • 関わって欲しい(アドバイスを受け入れない事で会話が続く)
  • 言いにくい本音を受け止めて欲しい
  • アドバイスを受け入れない事で相手の思い通りにならない

があります。

心理カウンセリングでもまずはしっかりと傾聴し、相手の状況を掴み、信頼関係を築けた上でないとアドバイスは逆効果です。アドバイスによって「今の自分を否定された」と感じられる事も多いです。
関連:人からのアドバイスを受け入れられない、素直に聞けない理由と改善方法3つ

イエスバットは、対面のコミュニケーションだけでなく、LINEでも起こりやすいです。この不毛なループの会話になった時は

  • アドバイスするのではなく、傾聴する
  • 相手の意向を聞く、会話を一旦打ち切る

ことでストレスを無くせます。

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  • この記事を書いた人

井上 隆裕

2004年よりプロの心理カウンセラーとして活動。2013年に独立開業。ジョイカウンセリングスクール代表。 運営者情報

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