心理学におけるストロークとは、人が発する様々な心理的メッセージのことです。具体的には人の
- 言葉の内容
- 表情(顔、目)
- 声のトーン
- 姿勢やしぐさ
- 行動
等がストロークに含まれます。プラス(心地よく感じられるもの)と、マイナス(嫌に感じられるもの)の2種類があり、人格形成、人間関係に大きな影響があります。
TA交流分析において良く使われる用語で、コミュニケーションの取り方にも大きな関係があります。
この記事ではストロークの種類と、具体的な使い方を解説します。
目次
ストロークの種類
プラスとマイナスのストロークの詳細は次の通りです。
プラスのストロークとは
人と人が接した際、心地よく感じられるものがプラスのストロークに分類されます。
言葉の内容 | ありがとう、おつかれさまです、~なところが素敵です等、何らかの良い影響を受ける言葉 |
表情(顔、目) | 安心できる笑顔、優しい表情、気持ちを汲んでくれている表情等、何らかの良い影響を受ける表情 |
声のトーン | 安心できる、落ち着ける、明るい気持ちになれる、元気になれるような声のトーン等、何らかの良い影響を受けるもの |
姿勢やしぐさ | 前のめりで話を聞いてくれる、落ち着いた姿勢で関わってくれる等、何らかの良い影響を受けるもの |
行動 | 疲れた箇所をマッサージしてくれる、怪我の手当をしてくれる、報酬等必要なものを与えてくれる、ハグする等何らかの良い影響を受けるもの |
といった言葉自体もプラスのストロークですが、シンプルに目をみて挨拶するだけでも良い影響を受けますので、これもプラスのストロークになります。
プラスのストロークの効果
プラスのストロークを受けると、
- 承認欲求(自分を認めて欲しい感覚)が満たされる
- 自己肯定感が高まる
- やる気が出る、幸福感を感じられる
という効果があります。誰しも自分のことを認めてくれる環境の方がやる気がでます。
特に承認欲求については、心理学者のマズローによると人であれば誰しも持っている根源的な欲求であるといわれています。
(※プラスのストロークの種類によって得られる効果は変わります)
マイナスのストロークとは
人と人が接した際、嫌・不快に感じられるものがマイナスのストロークに分類されます。
言葉の内容 | 舌打ちする、延々とグチを聞かされる、あなたはダメ、出来ない人ね、いなくなればいいのに等、何らかの嫌な影響を受けるもの |
表情(顔、目) | むすっとした表情、不機嫌な表情、変な目で見られる、睨まれる等 |
声のトーン | 怒鳴り声、暗い声など、何らかの嫌な影響を受けるもの |
姿勢やしぐさ | 会話時に身体が極端に後ろにのけぞる、暴力的なしぐさ等何らかの嫌な影響を受けるもの |
行動 | 暴力を振るわれる、嫌なものを見せられる、拘束される等何らかの嫌な影響を受けるもの |
上記に加え、何らかの関係性、関わる必要があるにもかかわらず、無視をすることもマイナスのストロークになります。
実生活でのマイナスのストロークの例
マイナスのストロークと人格形成の関係について
特に幼少期にマイナスのストロークが多い環境にいると、大人になって同じような失敗を何度も繰り返してしまう等、その人のその後の人生に大きく影響する価値観が、無意識のうちに根付きます。
例えば父親が母親に常にDVをしていた場合、その場で幼い子供がまともに感じていると家にいれなくなるため、無意識に感覚を止めます(感じてはいけないという価値観が根付く)。
大人になってからもその生き方を無意識に続けてしまい、マイナスの感情を抑え込み続けた結果、身体と心のコントロールが効かなくなるケースもあります。
ここについては詳細は人生脚本とは|効率的に書き換える方法を心理学を通して解説の記事をご参照下さい。
ストロークが足りていないと引き起こされる事
特にプラスのストロークが足りていない人は、本人も無意識のうちに不快なコミュニケーションパターンを仕掛けたり、仕掛けられたりすることがあります。
これは上記の「プラスのストロークの効果」のところで解説した承認欲求を満たそうとして無意識にやってしまうことで、誰しも仕掛けたり仕掛けられた経験があるものです。
TA交流分析では上記のようなコミュニケーションを、ゲーム分析と呼んでいます。
プラスストロークの例と使い方
プラスのストロークは自己肯定感が高まる効果があるため、心理カウンセリングでも重要なスキルですが、普段の生活やビジネスなど多くの場面で使えます。
人間関係の潤滑油でもありますので、かんたんに出来る方法を4つ紹介します。
- 外見に対してのプラスのストローク
- 内面に対してのプラスのストローク
- 行動に対してのプラスのストローク
- 以前と比較しての違い、変化を伝える
1 外見に対してのプラスのストローク
最もかんたんな方法です。例えば
- その服の色似合いますね。
- 笑顔が素敵ですね。
- 髪切ったんですね。
- 毛艶が良くてかわいい猫ちゃんですね。(その人が飼っている猫に対して)
- 素敵なバック(家、車、眼鏡などの持ち物)ですね。
等、その人自身の外見またはその人の身近にあるものに対して肯定的なメッセージを伝えます。
お勧めは、その人自身が大切にしている物や存在に対してのプラスのストロークです。例えば美人な方は幼いときから「きれいだね。かわいいね。」と言われ慣れているので、この言葉を言われても嬉しくない場合もありますが、その人が大切にしているペット等に対してプラスのストロークを送ると、ほとんどの方が喜ばれます。
自分のことを褒められるよりも、自分が大切にしている子供や第三者を褒められた方が、その言葉を受け取りやすい点も関係しています。
2 内面に対してのプラスのストローク
その人自身の性格、性質に対してのプラスのストロークで、ある程度その人自身をよく見ていないと伝えられません。例えば
などです。外見に対してよりも、言われた側は喜びが大きいです。
3 行動に対してのプラスのストローク
これは難易度的には内面に対してよりもかんたんですが、照れずに伝える必要があります。例えば
- 作ってくれた料理の味付けがちょうどよくて、美味しいです。
- いつも洗濯物をたたんでくれてありがとう。
- 迎えにきてくれてありがとう。
- こちらが求める状態の仕事をしてくれているので、とても助かってます。
- ◯◯さんの仕事は早くて丁寧で、私も見習いたいです。
などです。これをやっておくと、マウントを取りたがる上司に、仕事のミスを重箱の隅をつつかれるように言われることも無くなります。
詳細:ゲーム分析|さぁとっちめてやるぞ!(さぁつかまえたぞ!)
4 以前と比較しての違い、変化を伝える
これは特に何かの目標に取り組まれている方、部下の指導、子育て等において使える方法です。
他人が何か上手くやれない時、そのとばっちりや影響が自分に及ぶとどうしてもイラッとします。その時に以前のその人と比べて何か変化している点はないか、進歩している点はないかどうか振り返ってみます。
それだけでもこちらのイライラは落ち着きますし、可能であれば
と伝えられるとその人のやる気もアップしやすいです。
プラスのストロークとは違うもの
プラスのストロークと勘違いしやすいのが、アドバイスです。例えば
というアドバイスをされても、あまり嬉しくないはずです。これはそのアドバイスを受け取る心構えが出来ていないと、どうしても今の自分を否定されている感覚になるためです。
プラスのストロークはアドバイスではなく、心地良く感じられる言葉や心理的メッセージです。
職場、ビジネスにおける使い方
ここまで読んで頂いた方は、職場やビジネスでの使い方イメージしやすいと思います。最も簡単にできるのは、目を見て挨拶することです。
おはようございます、お疲れ様でしたと伝えるときに意識するだけでOKです。プラスのストロークは上司から部下に送ることもできますし、同僚同士、部下から上司に送ることも可能です。
上司から部下に対して
また、上司の方は部下に対して
と部下の方はやる気が出たり、働きやすいです。
その他プラスのストローク的な関わり方として
ようにすると上司部下双方のストレスは減りますし、良い結果を作ることにもつながります。
部下から上司に対して
プラスのストロークは人間関係の潤滑油ですので、部下から上司にかけておくと当然ながらかわいがってもらいやすくなります。
そしてマウントを取りたがる上司、指摘されたミスを直しても重箱の隅をつつくような発言をする上司がいれば、プラスのストロークでそれは予防できます。
詳細:ゲーム分析|さぁつかまえたぞ!
より効果的にプラスのストロークを伝える方法
- 伝える時は「目を見て伝える」
- 語尾は言い切る
とより効果的です。言い切るとは、
ではなく、
という形で、言い切るとその言葉がよりしっかりと伝わります。これは「~をやろうと思います」よりも、「~をやります」の方が確定の度合いが高いのと同じことです。
プラスのストロークを受け取ってくれない時
せっかくこちらがプラスのストロークを送っても、
と強く否定して受け取ってくれない場合もあります。謙遜ではなく、自己肯定感がかなり低めの人にとっては、プラスのストロークを素直に受け入れにくいです。
その際は無理に受け取ってもらおうとすると、「プラスのストロークを受け取れない自分はダメなのか」と感じられてしまいますので、その状態のその方を受け止め、粘り強く見守りながら関わる必要があります。
できるだけ肯定的な言葉を使って関わったり、挨拶や会話の際に視線を合わせるなど、肯定感を感じられる関わりを意識すればOKです。
プラスのストロークを多くもらう方法
出来るだけ他者からプラスのストロークを多くもらう方法として大事なのは、プラスのストロークを言われた時、
と受け取るようにします。
これは送った側からすると、「そんなことないです」と謙遜されるよりも、その言葉を素直に受け取ってもらえた方が嬉しく、もっと送ろうという気持ちになるためです。
また、自分の言葉を最も聞いているのは自分自身ですので、普段からマイナスの言葉を使わず、肯定的な言葉を使うようにするのも大切です。他人に良い影響があるだけでなく、自分自身にも良い影響があります。
まとめ
ストロークとは、人が発する様々な心理的メッセージのことで、心地良く感じられるものがプラスのストロークです。
その人の本質的な力を見て伝えるのは一定のスキルが求められますが、サービス精神旺盛な方や、誰かの役に立ちたい思いが強い方は、必然的にプラスのストロークの量が多くなります。
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