心理カウンセラーを目指す時、年上の大人との相談はハードルが高く感じられると思います。
スクールカウンセラーは子供相手ですので、一見かんたんにやれそうに見えるのですが、この仕事に就く難易度は高めです。
この記事では、社会人からスクールカウンセラーになるための必要な資格、仕事内容、役割、年収などを解説します。
社会人からスクールカウンセラーになるには
必要な資格について
「スクールカウンセラー」という資格があるわけではなく、学校で活動するカウンセラーの職種名になります。
公募されているスクールカウンセラーの募集要件として、臨床心理士資格または、公認心理師資格が求められるケースがほとんどです。そのため、
- 臨床心理士または公認心理師資格を取得する
- ハローワークなどで公募されている求人に応募し採用される
ことでスクールカウンセラーになれます。
これらの資格が求められるのは、スクールカウンセラーの選考要件として文部科学省が、
を推奨しているためです。
しかしどちらの資格も社会人になってから取得するには、最短で3年、約220万円と時間もお金もかかります。
実際のところ、どちらの資格も必須ではないんですね。これは文部科学省が定めている選考基準にもそう記してあります。
「スクールカウンセラーに準ずる者」としての採用
臨床心理士資格がなくとも、次のような方であれば大丈夫です。
- 大学院修士課程を修了した者で、心理臨床業務又は児童生徒を対象とした相談業務について、1年以上の経験を有する者
- 大学若しくは短期大学を卒業した者で、心理臨床業務又は児童生徒を対象とした相談業務について、5年以上の経験を有する者
引用元:文部科学省HP
※狭き門ですが上記条件を満たしていなくとも、知り合いのコネで採用された方もいます。
「スクールカウンセラーに準ずる者」としての採用ですが、実際には教育相談員の名目で募集されていることが多いです。教育相談員の仕事内容はスクールカウンセラーとほぼ同じで、
- 児童生徒へのカウンセリング
- 教職員・保護者に対する助言・援助
になります。
募集している自治体によっては、大卒や臨床心理士資格が必須要件でない所もあります。必ずしも4月からの採用ではなく年度途中に採用募集が出る場合も多いので、気になる方はハローワークの募集をチェックしてみて下さい。
採用面接にトライしてみて、難しいと感じられるようであれば他にも心理カウンセラーの仕事はあります。
通信の心理資格でもスクールカウンセラーになれる?
結論からお伝えすると、99%不可能です。
通信だと上記のスクールカウンセラーに準ずる者にも該当しません。
コネがあれば可能性はゼロではありませんが、採用する側の立場に立つと、未経験かつ通信での資格取得者を選ぶ理由がありません。
たとえ採用されたとしても、お子さんの役に立てるスキルが無ければ自分も居づらくなり、期間雇用を打ち切られるのは明白です。
仕事内容と役割
スクールカウンセラーの主な役割は、生徒の不登校やいじめ、発達に関わる問題等のサポートです。文部科学省では次のように定めています。
- 児童生徒に対する相談・助言
- 保護者や教職員に対する相談
- 校内会議などへの参加
- 教職員や児童生徒への研修や講話
- 相談者への心理的な見立てや対応
- ストレスチェックやストレスマネジメント等の予防的対応
- 事件・事故などの緊急対応における被害児童生徒の心のケア
引用元:文部科学省
仕事の詳細を解説します。
不登校への対応
スクールカウンセラーの役割として特に重視されています。というのも、スクールカウンセラーの配置は1995年以降右肩上がりで増えていますが、もともと不登校に対処するために配置されているためです。
カウンセラーというと相談室でじっと待っているイメージも強いですが、不登校予防のためにも、カウンセラー側から積極的に問題に関わる事が期待されています。
いじめの対応
特にいじめを受けた生徒(被害者)への心のケアがメインです。近年はいじめが原因で自殺する生徒もいますので、重要な役割です。生徒の心の拠り所になる、ある意味命を救う役割ともいえます。
いじめられる子は自己主張出来ない(嫌といえない)ケースも多いので、他の生徒との関わり方・コミュニケーションの取り方をサポートします。
不登校といじめへの対応が2本柱ですが、次の仕事も含まれます。
その他の役割
次の項目もスクールカウンセラーの仕事になります。
- 発達障害の生徒を教えている特別支援教育の先生に対してのアドバイス
- 発達障害の生徒の親御さんへのストレスケア
- 先生に対しての心理相談、心のケア
発達障害を抱えた生徒に対しての心のサポートというよりは、その生徒に関わる人へのサポートがメインです。
生徒やその親御さんだけでなく、先生のうつによる休職も増加傾向にあるため、先生方の心のサポートもスクールカウンセラーの仕事に含まれます。
この役割から見ても、特に苦しみや痛みを抱えている人、弱い立場の人の役に立ちたいと思っている方向けの職種といえます。
年収、給料、勤務形態について
給料について
年収換算すると約300万円で、他の仕事と比較すると高くはありません。というのも勤務形態として正社員としての募集は無く、ほとんどが年間での期間契約(非常勤)になるためです。
スクールカウンセラーの時給は約5,000円で、週12時間勤務が平均的です。(月24万円程度)
勤務形態は、各学校により若干異なりますが、1校につき週1日4時間とされている場合がほとんどです。そのため複数の学校を掛け持ちするカウンセラーが多いです。
非常勤ですので、退職金は無いと考えておいた方が良いです。
スクールカウンセラーは時給としては高いですが、職種的に300万円以上の年収を得るのは難しいため、お金を重視するのではなくやりがいを重視する方向け、男性よりは主婦業と兼ねられる方向けといえます。
また、教育委員会によっては教育相談員という名称で募集されています。役割はスクールカウンセラーと大差ありませんが、応募要件が緩めです。
教育相談員は、一般的には年間契約、週4日9~17時勤務で給料が月20万円前後です。(地域により異なります)時給換算すると1600円程度ですので、一般的な仕事よりは高めです。
勤務形態について
勤務形態として先生のように常に同じ学校にいるわけではなく、1校につき週1日4時間程度の勤務がほとんどです。対象となる生徒は1校につき数百人になるため、先生方と連携を取り、支援が必要な生徒を掴む姿勢が求められます。
公立の学校に週何日まで勤務できるか?
土日は休みとなりますので、最大で週5日までは可能です。
もちろん各自治体の募集状況により、変わります。気になる方は、お住まいの自治体の教育委員会のサイトをチェックしてみて下さい。
週1~4日のいずれかから選択する自治体が比較的多いです。
非常勤のデメリット
スクールカウンセラーの採用は、都道府県の教育委員会が行っていますが、1年契約の場合が多いです。
契約更新の場合、新たに公募試験に合格する必要がある自治体もあります。
2023年度は、東京都が250人のスクールカウンセラーを雇い止め(契約打ち切り)しています。
※採用は846人。引用元:東京新聞サイト
カウンセラーとしての力があれば継続更新される可能性が高まりますが、雇用面ではどうしても不安定な職種です。
小学校、中学校、高等学校の配置状況
2017年時点の文部科学省のデータでは、
- 小学校:74.6%配置
- 中学校:95.1%配置
- 高等学校:85.8%配置
引用:文部科学省 学校保健統計調査(参照2020-06-04)
となっています。(常勤・非常勤含む)特に思春期にあたる中学校への配置が重要視されてますね。
公立の配置増加に比例して、同じように私立の学校や専門学校にもカウンセラーを配置する学校は増えています。
ちなみに大学は国立、私立とも85~90%の割合で配置されていますので、カウンセラーが配置されていない学校の方がレアです。今の社会から必要とされている職種といえます。
まとめ
スクールカウンセラーは相談業務だけではなく、近年は生徒を対象とした自己理解やコミュニケーションに関する研修を行っている所もあります。
私自身社会人になってから民間のカウンセリングスクールでそういった事を学びましたが、特に話の聴き方や気持ちの汲み取り方はもっと若い時に知っておけば、その後の人生が大きく違うものになっていたと思います。
子供は寂しい、苦しい、悲しいといった感情を言葉にするのがまだ得意ではないため、絵や玩具を使って行う絵画療法、箱庭療法が重視されるのもこの職種の特徴です。