産業カウンセラーは、民間の心理資格の中では最も歴史があります。
労働者の心のケアと予防が主な役割です。職場復帰支援やメンタル不調予防対策、ストレスチェック後のフォロー等を行います。
国家資格ではなく、国家資格化の予定もありません。
この記事では、産業カウンセラー資格の特徴、資格取得に必要な事などを解説します。
特徴
他の心理資格と比較した産業カウンセラーの特徴は、次の3つです。
- 資格の歴史が非常に長い
- 認知度が高く、取得までの難易度は低め
- 支部が沖縄から北海道まで全国をカバーしていて、受講(資格取得)しやすい
民間の心理資格では、臨床心理士の次に認知度が高いです。
歴史について
産業カウンセラーは、日本の心理系の資格の中では最も歴史があります。誕生は1950年(日本産業カウンセラー協会の発足は1960年)です。
戦後の高度経済成長時に、労働者にその適応が求められた流れとして生まれています。
臨床心理士第1号が誕生したのは1988年ですので、戦後から需要が高かった分野といえます。
医療区分には弱い
労働者のメンタルヘルスを目的に需要が生まれていますので、メインの対応領域は労働者の心のケアです。
産業カウンセラー養成講座の内容を見ても、全19科目中、精神医学に関わる講義は1講義のみのため、医療区分は臨床心理士に比較して弱いです。統合失調症や強迫神経症など、精神疾患には強くありません。
産業カウンセラーになるには
資格取得方法はシンプルで、他の心理資格と同じく
- 規定の養成講座を受講する
- 学科試験・実技試験に合格する
でOKです。
養成講座は2019年の募集から、以前の通学制・通信制は廃止され、e-Learning制に統一されています。
e-Learning制の養成講座について
PCやスマホで受講と確認テストができるWeb配信講義がメインです。
【内容】
- 通学での対面講義:2日間(12時間)
- Web配信講義視聴:32時間相当 e-Learning
- 理解度確認テスト:13時間相当 e-Learning
- 面接実習に関する在宅課題6課題:28時間相当
- 104時間の面接実習(傾聴ロールプレイ)
【修了要件】
- 理解度確認テストで各科目において正答6割以上
- 面接実習に関する在宅課題の4課題で、ABCD4段階評価においてAまたはBの評価を受ける
- 104時間の面接実習に出席している事
引用元:産業カウンセラー協会ページ
受講期間は6ヶ月、10ヶ月どちらかを選択します。
面接実習の時間は主に水曜夜間と、月に1回日曜の日中に実施されています。(関東、関西の支部)
費用について
資格取得までにかかるトータル費用は331,000円です。
費用詳細については、1分でわかる産業カウンセラー資格取得と更新にかかる費用の記事をご参照下さい。受験費用、更新にかかる費用などすべてまとめています。
難易度、合格率について
他の心理資格と比較して、取得までの難易度はそれほど高くありません。
心理カウンセラー資格難易度ランキングでは、必要な費用や受験資格を考慮して8位に位置づけています。※ただし試験があるため、同8位のNLPよりは難易度が高いです。
学科試験、実技試験とも例年合格率は約70%ですし、養成講座の修了要件もゆる目で大学を卒業する必要はありません。
実技試験と聞くと難しそうなイメージがあるかもしれませんが、15分程度の傾聴ロールプレイです。規定のカウンセリング実習(104時間)に参加し、傾聴の聴き方を日常で実践していればそれほど難しいものではありません。
更新の有無
5年毎に更新の必要があります。
更新に必要な5年間の費用目安は、合計:64,900円です。
詳細:1分でわかる産業カウンセラー資格取得と更新にかかる費用
産業カウンセラーとキャリアコンサルタントの違い
産業カウンセラーとキャリアコンサルタントは一見似通っていますが、全く別物の資格です。
産業カウンセラー | キャリアコンサルタント | |
主な役割 | 労働者のメンタルヘルスケアと予防 | 未就業者の就業支援を実務的・心理的にサポート |
関わり | カウンセリング要素が強め | アドバイス的要素が強め |
取得場所 | 全国主要都市 | 全国主要都市 |
トータル費用 | 331,000円 | 386,600円 |
資格区分 | 民間資格 | 国家資格 |
別物の資格のため、産業カウンセラー資格を取得している人がキャリアコンサルタント資格を取得する際には、通常の手順を踏まえる必要があります。(JAICO主催のキャリアコンサルタント養成講座を受講した場合、32,400円の割引を受けれるメリットがあります。)
需要・ストレスチェックとの関連性について
2015年12月から50人以上の企業でのストレスチェックが義務化されていますが、産業カウンセラーは、ストレスチェックを実施できるわけではなく、他の従事者と比較してストレスチェックとの関わりはそれほど高くありません。
需要が無いわけではありませんが、公募されている仕事は少ないです。
ストレスチェックの概要として
- 回数は年1回
- ストレスチェックの目安は厚生労働省より提示されている
- 事業者の義務は医師による面接指導のみ
とされている点が大きいです。厚労省のページには以下のように記されています。
ストレスチェックの結果後、高ストレス者として面接指導が必要とされた労働者から申出があったときは、医師による面接指導を行うことが事業者の義務になる。
引用:厚生労働省 ストレスチェック制度の概要(参照2020-12-09)
ちなみに労働者から申出がなければ、面接指導は事業者の義務ではありません。医師による面接指導は義務化されてますが、各種心理カウンセラーの面接は義務化されていません。
産業カウンセラーは、従業員のうつなどの予防対策には関わる事ができます。
就職、仕事に繋がるかどうか
この資格を持てば心理の仕事に即つけるというものではありませんが、ハローワークで公募されている次のような職種では、産業カウンセラー資格の有無が応募条件に含まれている事があります。
- 若者自立支援事業
- 生活困窮者への相談支援業務
- 労災病院での電話相談
公募されている心理系の仕事で、応募条件に含まれるの民間資格は臨床心理士と産業カウンセラーくらいですので、認知度の高さがうかがえます。
仕事に活かす意味合いで、企業内の人がキャリアアップ目的で取得していることも多いです。