応用心理士資格は、日本応用心理学会が認定する資格です。すでに心理関係の活動をしている個人、集団の社会的地位を上げるために1995年に資格認定スタートしています。
認定元の日本応用心理学会は、創立1933年で非常に長い歴史があります。心理学者の齊藤勇さんが名誉会員です。登録者は、2021年時点で231名と他の資格と比較して非常に少ないです。
資格が作られたきっかけからしても、社会人がコミュニケーションスキルを高めたり、自分を癒やす・自己理解を深めることを目的としたタイプではありません。
この記事では応用心理士資格の取得方法、難易度などを解説します。
資格取得について
この資格は受験したり何らかの講座を受けるタイプではなく、
- 資格申請要件を満たす
- 申請手続きをする
ことで取得できます。受験が無いため、受験資格も存在しません。
資格申請要件について
日本応用心理学会に入会後2年を経過していて、現在も会員であることが基礎条件です。その上で次の4つのいずれかに該当する必要があります。
- 大学または大学院において,心理学専攻又はこれに準ずる分野を卒業あるいは修了した者。
- 機関誌『応用心理学研究』に1件以上の研究論文(共著も含む)を発表した人,または本学会の年次大会において2件以上の研究発表をした者。
- 認定審査委員会が応用心理学と関係があると認めた専門職で,3年以上の経験を有する者。
- 応用心理学と関係ある職で3年以上の経験を有し,本学会研修委員会企画の「研修会」に5回以上参加した者。
日本応用心理学会HPより引用
日本応用心理学会に入会するために
以下の3つの条件のうち、どれか1つを満たしていればOKです。入会する時に、既存会員からの推薦が必要になります。※推薦者が得られにくい場合は学会に相談できます。
- 四年制以上の大学で心理学およびその隣接分野を専攻した者
- 日本心理学諸学会連合が認定する心理学検定1級合格者で22歳以上の者
- 第1号に準じ常任理事会が認める者
大学は特に指定されていません。
他の多くの認定資格のように、認定元が開催している講座を受ければ良いというものでは無いのは大きな特徴です。
必要な費用
他の心理資格と比べると、大学に行くための費用を除けば非常に安価で取得できます。
継続してかかる費用として年会費8,000円。
資格認定に関する費用として、審査料:10,000円+認定料:30,000円=合計40,000円。
日本応用心理学会で何かを学んで取得するものではないので、妥当な費用かもしれません。
ちなみに応用心理士資格を取得後、学会を退会すると資格は無いものとされます。
難易度・合格率について
難易度はやや高めです。資格難易度ランキングでたとえると、6位:臨床発達心理士と7位:キャリアコンサルタントの間くらいです。
理由としては日本応用心理学会入会時に既存会員からの推薦が必要で、心理学関係の大学卒業程度の学力が求められるためです。
合格率については受験するタイプではないため、存在しません。
更新の有無
更新の必要はありませんが、資格維持のために年会費8,000円が必要です。
メリットについて
この資格のメリットは、申請要件をすでに満たしている場合、比較的かんたんに資格取得できる点です。受験する必要も無く、何らかの講座に出る必要もありません。
ただし、資格取得者が200名強と正直あまりにも少なく、非常にマイナーな資格といえます。
歴史が長い割に取得者数が少なく、資格の認知度が非常に低いのは残念だと思います。
臨床心理士資格との関連について
それぞれ別の団体が認定する資格ですが、全く関連が無い訳ではありません。
臨床心理士資格は、「(財)日本臨床心理士資格認定協会」が1990年に発足させていますが、この協会の元は1955年の「日本応用心理学会」の活動(心理技術者養成教育課程に関する提案を各大学に提出)から流れてきています。
臨床心理士資格のほうが認知度は高いですし、就職や仕事の応募条件にもなっている事が多いです。
※認定心理士を認定している日本心理学会も同じく1955年の「日本応用心理学会」の活動を源流としています。
仕事や就職について
この資格を取得していても日本応用心理学会から、仕事の紹介は特に見受けられません。
学会の名前からも「カウンセリング」より、「心理学」に重点を置いていることが見てとれます。
心理学の研究が好きな方には良いかもしれません。すでに大学で心理学を学んでいて、心理関係の活動をしていて、さらなるキャリアアップを目指されている方向けの資格といえます。
カウンセラーになりたい、心理の学びを仕事や日常に活かしたいという方は、他の資格の方が向いています。