ネガティブな人と関わるのはとてもエネルギーを使いますし、疲れます。グチをひたすら聞き続けるのも辛いです。
関係性の弱い人であれば距離を取ってあまり関わらないようにすれば済む話ですが、家族や大切な人がネガティブだと、心配で何とかしてあげたい気持ちも出てくると思います。
この記事では、心理カウンセラーとして20年活動している私が、ネガティブな人が楽になってもらえる接し方と、どんな言葉をかければよいかについて解説します。
ネガティブな人に楽になってもらえる接し方5つ
1 受け止めながら聞く
ネガティブな人と関わる時の最も大切なポイントは、相手を変えようとせず、受け止めて聞くことです。
つらい状態から抜け出して欲しい思いから、アドバイスしたい気持ちが出やすいですが、アドバイスしないのもとても重要です。というのも、自分のことをわかってもらっていない(話しをあまり聞いてもらえていない)状態でのアドバイスは、今の自分を否定されている気持ちになって逆効果になるためです。ますますネガティブになります。
この関わり方は心理カウンセリングでは受容と呼ばれており、ほとんどのカウンセラーが使用しています。
詳細:受容とは|心理学での意味と方法、効果を解説
さらに具体的な聞き方を紹介します。
2 共感する
共感とは、相手の気持ちを汲み取って伝えることです。
例えば、
と言われたら、
という感じで励ますのではなく、相手の気持ちを察していきます。
共感の1番のメリットは、結果として自己肯定感が高まって気持ちが楽になる点です。
ネガティブな状態は様々ですが、基本的に何らかのマイナスの感情(辛さ、悲しさ、寂しさ、怒り、恨み、不安など)を持っている状態です。
マイナスの感情があるとシンプルにしんどいですが、共感してもらえるとわかってもらえたと感じられ、その気持ちをクリアにするサポートになります。
3 話しを聞く時は時間を決める
ネガティブな話しを受け止めながら、共感しながら聞くにはかなりのエネルギーを使います。そのため時間無制限で聞くのではなく、10分、30分など時間を決めておき、長くても2時間までにしておいた方が良いです。聞く方も疲れます。
会話の切り上げ方は、可能であれば話された内容を要約して伝え、「また後日様子を教えて」と言葉をかけれればベストです。
詳細:要約のやり方と2つの効果
4 出来ない事は出来ないと伝える
上記のように受け止めたり、共感しながら聞くと、人によっては過剰に頼ってきて依存され、こちらが苦しくなることがあります。話しを聞くにしても、
- 「30分までなら聞くよ」
- 「深夜帯は寝てるから電話に出れないよ」
など、出来ないことは出来ないとしっかりと伝えると依存されにくくなります。
関連:依存されやすい人の特徴・心理と依存された場合の対応法3つ
5 ネガティブな人にかける言葉、励ます言葉は?
人によって変わるのはもちろんですが、基本的には上記で解説した共感の言葉が適切です。
- 大変だったね。
- しんどかったね。
- かなり我慢したんだね。
などです。大事なことなので繰り返しますが、
等のアドバイスは逆効果です。相手側は「今の状態の自分はダメなんだ…」と感じられ、さらに辛くなってしまいます。
ネガティブな人をポジティブにする方法
ネガティブな人は自己肯定感が低く、自己否定・他者否定(またはどちらかのみ)が強い状態です。
少しでもポジティブになってもらうためには、まずはネガティブな人に対する理解を深めるのが先決です。今のその人の状況、価値観、なぜそのように考えるのかの基盤となる育ってきた家庭環境なども理解できると、関わる側がネガティブな人を許容しやすくなります。
ネガティブな状態も様々ですが、次のような会話のパターンは、人が無意識にハマってしまうものとして心理学的に確立されています。
- 延々と相談を持ちかけられ続け、会話が終わらない。
- こちらから様々な提案をしても、「~だから出来ません」と、自分の価値をあえて落としてくる。
TA交流分析という心理学では、1はイエスバット、2は義足と呼ばれており、人がハマりやすい不快なコミュニケーションパターンとして定義されています。
どうしてもネガティブな人が気になる場合
相手の理解を深めてもどうしてもネガティブな人が気になる場合、問題はネガティブな人にあるのではなく、その人が気になる自分自身にあるといえます。
というも、人であればポジティブな時もあれば、ネガティブな時もあるのが自然です。
という意識が強いと、無意識に後ろ向きな状態、ネガティブな状態の自分を受け入れず、否定していることがあります。
ネガティブな状態の自分を受け止めていない(認めていない)と、ネガティブになっている他者のことも同様に認められず、どうしてもその人が気になったり、相手の話が聞けなくなります。
関連:嫌いな人が頭から離れない、どうしても気になる心理と簡単な対処法
補足と事例
ここまでネガティブな人が楽になってもらえる関わり方をお伝えしてきましたが、大前提としてネガティブな人はマイナスのエネルギーが強い状態といえます。
そのためその人の話しを聞くには、こちらも一定のエネルギーを使います。特に自分自身がストレスが強く、疲れているときには話しを聞く余力がどうしても取れません。
ですので話しを聞けない時は「今は疲れているので話しを聞けない。また今度にして。」と伝えると、相手に振り回されません。
これをふまえ、当サイトの別記事に頂いたコメントの事例を紹介します。
事例|ネガティブな発言をする子供との関わり方がわからない
中2の娘は不登校気味だったり、部活も3ヶ月でやめる、宿題もせず、人の文句や学校の文句、先生の文句、環境、遺伝子なんでもネガティブな発言をします。
小学5年生の頃に不登校、抜毛。潔癖性になり、ついには3ヶ月精神科に入院しました。病院で他の患者さんと関わって自傷を覚え、退院後1年間は自傷行為がありました。
今でこそ、落ち着きましたが今度は全てを蔑む言葉を聞くたびに、聞いている方が自信がなくなるような心になり、まともに聞いてあげられず、主人はあまり関与してくれません。
カウンセラーにも行ったことがありますが、笑いながら「お母さんが入院しますか?」と簡単に言われ、全てわたしがいけない気持ちのまま、娘のネガティブな話を向き合って聞いてやる余裕もないため、どうしたらいいのかわかりません。苦しいです。
でも一番苦しいのは娘なのはわかっているんです。でもネガティブ思考で人の文句を言っている娘は見ていられません。悲しいです。どう声かけてやればいいですか。幼少期が原因なんて過去を言っても振り返れません。今をどう生きればよいのか教えてほしいです。娘に言いすぎてもまた自傷されるのも避けたいですし、嫌になります。
大切な娘さんがこのような状態になると、親として心配する気持ちも強いと思います。
上記のコメントにこの記事の内容を踏まえてお応えすると、
- まずは話を聞ける心の状態を作る(自分自身の心のメンテナンスをする)
- ネガティブな話題を言われたら、できるだけ共感する
- 自分の価値観を振り返る(ネガティブはダメ、ポジティブはOKという思いが強くないかどうか)
ことで楽にかかわれます。
というコメントから、おそらくお母様ご自身が、ネガティブなことや人の文句を今まで言えない家庭環境だったのではないかとお察しします。(父、母が非常に厳しかった)
ネガティブな状態から抜け出す時も抵抗がある
ネガティブな状態を変えられる心理状態の時もあれば、変えるエネルギーが今は無いときもあります。
最終的には本人が変えようと思わない限り、周りの人に出来ることには限界があります。
また、人は悪い状態から良い状態に変わるときも抵抗感があります。
この記事の内容を実行した上で、さらに本人が変わりたい思いが強いのであれば、プロの心理カウンセラーに任せるのが適切です。
私自身もオンラインカウンセリングを行っておりますのでご活用下さい。
ネガティブな人が今は変わりたい思いが無いときも、もちろんあります。そんな時は無理に変えようとせず、共感し、側にいて差し上げるだけで心のエネルギーが充電されます。