臨床心理士は、公益財団法人「日本臨床心理士資格認定協会」が発行する民間資格です。
特徴としては、数ある心理系民間資格の中でも認知度・信頼性No1で、この資格があると様々な分野で心理カウンセラーとして仕事がしやすくなります。
というのも、カウンセラー募集の求人では、この資格が応募条件とされているケースが多いです。特に病院やスクールカウンセラーとして活動する場合は、この資格を所持していないと難しいです。
病院では医師と連携して活動することが多く、統合失調症や強度のうつ病、不安障害等、日常生活を送るのに支障をきたしている人のサポートが主な仕事です。
国家資格である公認心理師の誕生により、これから臨床心理士資格取得者は以前より減る事が予想されますが、まだまだ仕事に直結した資格である事に変わりはありません。
公認心理師と臨床心理士の違い
臨床心理士は1988年に資格認定がスタート、公認心理師は心理職初の国家資格で、2018年に第1回の試験が行われています。
臨床心理士がカバーする医療関係と仕事の活動分野は被りますが、公認心理師資格を所持している人が急には増えないため、共存するものと考えられます。
取得難易度の違い
公認心理師の方が取得難易度は高いです。
理由としては、一旦社会人になってから公認心理師資格を取得するには、心理系の大学と大学院に通わなくてはならないためです。大学院での必須の実習時間はトータル450時間と非常に多いため、大学院からは仕事を辞めないと無理です。
詳細:社会人から公認心理師になるには|必要な費用と期間
比べて臨床心理士資格の場合は、社会人になってからの取得のハードルは公認心理師と比較して低めです。
- 臨床心理士は、大学院が通信課程でも可能
- 臨床心理士は大学卒業は心理系に関わらず、どの学部でもOK
です。
その他の違いとして、50人以上の企業で義務化されているストレスチェックについては公認心理師は実施出来ますが、臨床心理士は出来ません。
これらの事を考えると、現在高校生以下の方は公認心理師一択ですが、現在社会人の方は臨床心理士か、民間のスクールが現実的です。
更新の違い
臨床心理士は5年毎に更新が必要ですが、公認心理師は更新不要です。
更新にかかる時間(特定の研修に参加する必要有り)、費用面を考えると非常に大きな違いです。
臨床心理士の仕事、活動分野
臨床心理士は医療系を始め、ほぼすべての心理に関する仕事をカバーしています。他の民間心理資格ではこうはいきません。
- 児童相談所、障害者施設(心理判定員)
- 教育関係(スクールカウンセラー)
- 司法分野(刑務所での処遇カウンセラー)
- DV関係(男女共同参画センターでの仕事)
- 病院(心療内科、精神科、ホスピス、避妊治療の心のケア等)
病院で働く場合は、臨床心理査定とカウンセリングが2本柱になります。
心理査定は、発達障害や心理症状などをチェックするための検査です。
カウンセリングは会話中心で行ったり、様々な心理療法を使うこともあります。
精神科・心療内科からの募集がほとんどですが、ハローワークで公募されているものをチェックしていると
- ホスピス(終末期医療)での患者さんの心のケア要員
- レディースクリニックでの避妊治療に対しての心のケア要員
として募集されている場合もあります。
臨床心理士になるには
- 受験資格を満たす(4年制大学卒業+指定大学院を修了する)
- 1次試験(マークシートと論文)と2次試験(面接)に合格する
ことで資格取得できます。
4年制大学は心理系に限らずどの学部でも大丈夫ですが、大学院は指定大学院(心理系)を修了する必要があります。
難易度、合格率
試験の合格率は毎年約60%です。
指定大学院を修了する必要があるため、取得に時間と費用がかかり、難易度は高いです。
費用について
資格審査料+登録料は合計:81,500円でそこまで高くありませんが、それまでの受験資格を満たすための期間と費用がネックです。
4年制大卒の社会人の方であれば、最短で3年、費用は約220万円必要です。
詳細:社会人になってから臨床心理士資格を取得するまでにかかる費用と期間
更新の有無
5年毎に更新が必要で、更新までの5年間で定められた研修に参加し、15ポイント以上を取得する必要があります。
更新費用として20,000円かかります。
更新しないと資格は失効となるため、要注意です。
こういった更新制度が設定されているのは、臨床心理士資格はカウンセラーのスキル向上を重要視しているためです。スキルが上がれば上がる程、様々なクライアントに対応出来るようになりますし、より短い時間で効果の高いカウンセリングが出来るようになります。
年収について
病院に正社員として勤めた場合の年収目安は、約400万円です。
スクールカウンセラーだと、非常勤で時給5000円程度の所が多いです。
心理判定員になれた場合は、勤続すると年収は跳ね上がり1000万に届きます。
注意しておきたい点として、正社員での募集は多くありません。期間雇用が多いです。
その他心理の仕事全般についての給料は、心理カウンセラーの年収・給料・勤務体系の記事をご参照下さい。
資格取得前に注意しておきたい事
この資格を取得すればカウンセリングが出来るようになる訳ではない
臨床心理士の中には、もちろん素晴らしいカウンセリングを行う方もおられますが、この資格を持っているからといってカウンセリングが出来るという訳ではありません。実際にカウンセリングを受けに行ってみると体感できます。臨床心理士のカウンセリングに疑問や不満を持たれた方もおられるのではないでしょうか。というのも、臨床心理士の試験内容にも関係していると思います。
試験は一次試験(筆記試験)と第二次試験(口述面接)のみで、規定の知識は判定基準としてありますが、カウンセリングロールプレイ等のスキルチェックをするわけではありません。
臨床心理士には変な人が多い?
もちろん社会性のある臨床心理士さんもおられるのですが、変な人が多いと感じられるのには理由があります。
これは臨床心理士の取得難易度が高い事にも関係しているのですが、指定大学院の修了が必須です。そして資格取得後に多くの方はその後一般企業に務めることなく、心理士としての仕事に就きます。
心理カウンセラーは相談者から頼られる仕事で、先生、先生と言われます。必然的に社会人としての礼儀やサービスをする観点が弱くなり、傲慢になりやすい職種なのです。
このように職業柄どうしても社会性が弱くなりやすいため、個人的には公認心理師のように大学院修了を必須とするのではなく、社会人経験のある方が増えた方が健全だと思います。
まずは臨床心理士のカウンセリングを受けてみる
この資格は社会的な認知度も高く、魅力的が高い事には間違いありません。その分、時間もお金も必要な資格です。大学院に何とか入り、勉強しながら臨床心理士の世界に触れたところでこの資格は自分には向いていないと、すれ違いを感じると残念です。
この資格を目指される方は、まずは何人かの臨床心理士のカウンセリングを受けてみることをオススメします。特に悩みが無くとも、「心のメンテナンスに来ました。」「箱庭療法を受けてみたいです。」「夢分析をして下さい。」等の理由でカウンセリングを受けることが出来ます。
実際に体感されてみて、自分もこういうことが出来るようになりたいと感じられたら資格取得に向けるモチベーションも強く維持することが出来ると思います。
心の問題の深い相談者のカウンセリングが多い
医療関係の悩みを抱えた方のカウンセリングは、貢献出来るとやりがいも大きいです。その反面、カウンセリングが適切でないと相談者が自分で人生の幕を閉じるリスクも上がります。
病院に行くような方の治療的カウンセリングではなく、コミュニケーション、生きやすさや自己肯定感を高めるためのカウンセリングがしたいという方は、民間のスクールでの資格取得方が向いています。